本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

意外に知られていない大学授業料免除制度は誰がどうやって受けられるか

奨学金については、メジャーな社会問題として各種メディアに取り上げられ、多くの人が知ることとなった。一方で、同じ高等教育とお金に関わる制度である大学授業料免除については、メディアもまったくといっていいほど取り上げないため、一般的にはあまり知られていない。


日本には国公立大学と一部の私立大学で、家庭の経済状況により授業料の全額または半額が免除される制度がある。私も、親がほぼ無収入だったため東大の4年間は授業料の全額が免除された。まったく授業料を支払わずに大学を卒業することができたのだ。


国立大学の授業料は2017年現在で535,800円なので、4年間でおよそ215万円の給付型奨学金を受給するのと同じ経済的支援を受けることになる。こういった授業料減免の恩恵を受けている学生は、2014年度の国立大学では述べ18万1千人、公立大学1万2千人、国立高等専門学校は述べ4千人、公立高等専門学校は400人、2015年度の私立大学は4万人だった。ただし、国立大学や高専は述べ人数で計算されており、1人が2回分(2学期分)計算されているものものある。延べ人数での合計では237,400人が授業料減免の対象となり、財政規模では約490億円となる。この人数や予算規模は近年増加傾向にある。なお、私立大学については、国が予算補助している制度で、このほかに大学独自の授業料免除制度を設けているところもある。


では、具体的にどういった学生が授業料減免を受けられるのだろう。主に成績と家計の収入によるが、成績は日本学生支援機構の第2種奨学金の学力基準との均衡を考慮するとあり、さほど厳しい基準ではない。したがって、家計収入によって減免が定められることになる。具体的には、世帯人数に対して免除を受けられる総所得額が設定されている。総所得額の計算方法は、たとえばサラリーマンの場合は、次の計算式で収入から所得控除額を差し引いたもの(収入―所得控除額)が総所得額となる。この計算式のほか、母子・父子世帯の場合や自宅通学か自宅外通学かなどによって特別控除額が定められている。

収入金額(税込)​所得控除額
104万円以下​収入金額と同額(全額控除)
104万円を超えて200万円まで​収入金額×0.2+83万円
200万円を超えて653万円まで​収入金額×0.3+62万円
653万円を超えるもの​258万円

計算式によって算出された総所得額に対して、減免を受けられるかどうかは、以下のように、世帯の人数に応じて全額免除と半額免除それぞれで基準額が決められている。

世帯​全額免除​半額免除
1人​880,000円​1,670,000円
2人​1,400,000円​2,660,000円
3人​1,620,000円​3,060,000円
4人​1,750,000円​3,340,000円
5人​1,890,000円​3,600,000円
6人​1,990,000円​3,780,000円
7人​2,070,000円​3,950,000円

たとえば、3人家族の事例で考えてみよう。両親と本人の3人家族で、お父さんがサラリーマンで給与収入が600万円、お母さんなは専業主婦、本人は自宅外通学とする。お父さんの所得は、600万-(600万×0.3+62万円)=358万円。特別控除額は、本人が自宅外通学なので72万円。358万円-72万円=286万円が総所得額となる。3人家族の場合、全額免除の収入基準額は162万円、半額免除の収入基準額は306万円なので、全額免除の対象とはならないが、半額免除の対象になる。なお、この3人家族で自宅外通学の事例では、お父さんの給与収入が628万円までであれば半額免除に該当する。


次に4人家族の事例で考えてみる。両親と本人、弟(妹)がいる世帯で、お父さんがサラリーマンで給与収入が480万円、お母さんがパートで103万円、本人は自宅外通学、弟(妹)公立の高校生とする。お父さんの所得は、480万円―(480万円×0.3+62万円)=274万円、お母さんの所得は、103万円-103万円=0円。特別控除額、本人が自宅外通学で72万円、弟(妹)が公立高校生なので28万円。総所得額は274万円-72万円-28万円=174万円だ。4人家族の場合、全額免除の収入基準額は175万円、半額免除の収入基準額は334万円なので、全額免除の対象となる。なお、この4人家族の事例では、お父さんの給与収入が700万円でも半額免除の家計基準に収まる。


授業料減免の基準はイメージよりも低いと感じるのではないだろうか。世帯収入が500万円から700万円というと、平均的な収入に近いが、それでも全額または半額免除の対象になりうるのだ。

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以前の記事で、東大生のなかでも家計収入が450万円未満の家庭が13.5%いることに触れたが、その大半の学生が実際に授業料減免を受けている。他の国公立大学でも同様だ。こういった事実はほとんど報道されないため、多くの学生や家庭が知らない状況だ。また、授業料免除制度があることはなんとなく知っていても、計算式や収入基準額などを知らないため、自分がその基準にあてはまらないと思い、申請をしていない学生も一定数いると思われる。

 

私は、この大学授業料免除のおかげで、親の収入がない状況でも大学を卒業することができた。「自分の家は貧しいから大学進学なんてできない」と、経済的理由で初めから大学進学をあきらめてしまっている高校生には、ぜひこの制度を知ってもらいたい。また、塾に通わず独学で東大や国立大学に合格するための方法は、『最強の独学術』を参照いただきたい。

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