だいぶ古い本になるが、小説転覆―海運・大型乗っ取り事件 (講談社文庫)を読んだ。戦後最大の株買い占め事件と言われた、三光汽船によるジャパンラインの乗っ取り事件という海運業界を舞台にした経済小説。
運輸省(当時海運局長の若狭得治)が舵取った文字通りの「護送船団方式」による海運統合再編や、一早く国際色の強い業界となった海運業界の特色、昭和における株戦の特徴など、勉強になるところも多かった。
登場人物のモデルは後に全日空会長、ロッキード事件で知られる若狭のほか、興銀の中山素平、政治家で三光汽船の社長でもあった河本敏夫、最終的に仲介に立った児玉誉士夫、事件と直接の絡みはないが海運業界や政財界ににらみのきく笹川良一など。
最近は、小説やドラマ、映画でヘッジファンドを題材にした「ハゲタカ」が人気だが、株買い占め事件ということでは、こちらもスケールのでかさと裏表の奥深さで決して負けてない。昭和経済史の勉強も含めて、読んでみるのもよいのでは。