ダボス会議を作った男
世界を変えるビジネス―戦略的な社会貢献活動を実践する20人の経営者たち
- 作者: マーク・ベニオフ,カーリー・アドラー,齊藤英孝
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/09/05
- メディア: 単行本
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週末、講演で出向いた福井への往復中に読んだ本。スタバやインテルといった社会貢献活動にも取り組む有名企業の経営者たちの思想や活動についての20編。アメリカの活況あふれるNPO活動が、これら企業系財団の資金とビジネスマンたちのボランティア活動によって支えられていることは留学中に感じたところ。IT系のインテルがIT教育、医療系のグラクソ・スミスクラインが医療系の研究支援や医薬品配布などを中心に社会貢献にコミットしている潮流が、筆者の指摘する「戦略的な社会貢献」「統合的社会貢献」というものなのだろう。
翻って日本の財団や企業のCSRはまだまだこれからの様相があるが、ただ「いいことをする」だけでなく、強みをいかした特徴ある社会貢献に取り組まなければならないことを強く感じる。
日本にぜひ取り入れてほしいのは、3か月〜1年間の長期有給休暇による非営利団体へのインターン(ボランティア)制度。ITや財務、マネジメントなどのスキルをもつ企業人が非営利の現場に入ることで、その技術を取り入れることができる。逆に、インターンで非営利の現場を経験した企業人も新しい観点や刺激を得ることできる。
20の事例の中で最も興味深かったのが「世界経済フォーラム」。企業の集まりでも国際機関でもなくスイス・ジュネーブに本部を置くNPO。ダボス会議を毎年開催していることで有名だ。今やG8に匹敵するくらい注目を浴びている会議だが、実は1NPO、1個人が始めた仕組み。
創始者はスイス人のクラウス・シュワブ。リーディング企業のCEO、各国の首脳、国際NGO代表らが集まり、地球規模の課題を議論する。会員制を取り、年間約150億円の収入をもつ。面白いと点は、社会起業家に大企業とのネットワークを提供することで、助成金以上の価値を付加していること。逆に大企業には各国首脳との接点を提供している。まさにスイスの強みをいかした取り組みだ。現段階では参加者・団体が欧米に偏っている分、これに匹敵する仕組みがアジアにもできることを願う。
いずれにしても、国家対国家、企業対企業という枠は崩れはじめ、各プレーヤーが様々なステージで交錯し始めている。化学反応を起こす新しい世界を泳ぎ切る新しい人間が日本にも必要だ。