『世界を変える偉大なNPOの条件』を久しぶりに読んだ。
『ビジョナリーカンパニー』の社会セクター版と称される本で、偉大なNPOが大きな社会的インパクトを出し続けられている要因を「6つの原則」としてまとめたものだ。
その6つの原則の概要は以下の通り。
- サービスを提供するだけでなく、政府と協力して政策転換を促す。
- 市場の力を利用し、企業を敵視したり無視したりせず、強力なパートナーとみなす。
- 活動を支援してくれる個人が有意義な体験を行えるよう工夫し、彼らを大義のために動いてくれる熱烈な支持者に変えていく。
- NPOのネットワークを築き、他のNPO組織を、希少な資源を競い合うライバルではなく仲間として扱う。
- 変化する環境に適応し、戦略的であると同時に革新的かつ機敏に動く。
- 社会変革の強力な推進者となるために、リーダーの権限を分担する。
このうち1.の「サービスだけでなく政策も」という点がNPO界隈では抜け落ちやすい視点だが、社会的インパクトを最大化させ、真の意味で社会を変えるには非常に重要な要素となるということに同感だ。
私の勤める日本財団では、各NPOに助成事業というかたちで個別の取り組みを支援するだけでなく、如何にそれらを先駆的なモデル事業として社会に波及させていくかを重視している。その手法として、政策提言して政府を巻き込み、法律や制度を変え、政策を転換させることを中長期の目標に置くことが多い。
私が事業責任者を務める子どもの貧困対策事業でも、「第三の居場所」と称する子どもの居場所を現在全国約30拠点で展開しているが、そこでの子どもたちの成長(認知能力と非認知能力の変化)を測定し、事業の効果検証を行っている。その検証結果を踏まえて政策提言を行い、貧困の連鎖を断ち切るための政策の大胆な実行を促したい。
ただし、6つの原則から考えると、2.市場の力を利用した企業の強力なパートナー、3.熱烈な支持者についてはまだまだ足りていない。
今年からソニーや伊藤忠テクノソリューションズとパートナーシップを締結し、子どもの貧困対策に向けて、様々なかたちで協力いただいているが、上記の著書で挙げられたようなレベルまでにはいたっていない。それでも、単なる寄付だけでなく、子どもたちへのプログラミング教室など、パートナーの強みをいかした連携を模索している。
もう一つは、個人の熱烈な支持者。個人の方々からたくさんのご寄付をいただいているが、有意義な体験を提供することで「熱烈な支持者」にまでなっていただいているとはいえない。第三の居場所に通う子どもたちの成長を、支援者一人一人が身近に感じ、一緒に成長することで、この事業とビジョンへの熱烈なファンになっていただけるような仕組みをつくっていく必要がある。
上記の著書ではアメリカ発のNPOが12団体挙げられている。Teach For Americaやセカンド・ハーベストなど確かに社会を大きく変えていっている有力NPOばかりだ。一方でそのようなNPOが日本にどれだけあるかは心もとない状況だ。
日本社会が非常に大きな課題として直面している「子どもの貧困問題」。この課題解決に向けて、「6つの原則」からもう一度振り返り、真の意味で社会を変えていく事業に発展させていきたい。
世界を変える偉大なNPOの条件――圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則
- 作者: レスリー・R・クラッチフィールド,ヘザー・マクラウド・グラント,服部優子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/07/13
- メディア: 単行本
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