先日、「五大陸ドラゴン桜」ことe-education代表の税所篤快さんと会って話をした。現役の早大生にして、バングラデシュで貧困層の高校生に自ら撮影した有名教師のDVD授業を無料提供し、地元トップであるダッカ大学合格に導いたのを皮切りに、ルワンダやガザ、フィリピンなど世界各地で映像授業による新たな教育プロジェクトを立ち上げている注目の社会起業家だ。詳しいストーリーは彼自身の近著に紹介されているので、お薦めしたい。
- 作者: 税所篤快
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2013/06/11
- メディア: 単行本
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私は職業柄、国内外のいろんなNPOを見てきたが、オリジナルな面白いアイディアを実現させるスピード感に溢れているという点では、彼のプロジェクトは海外のNPOにもひけをとらない。課題は大学生がボランティアで運営しているという組織基盤の弱さだが、他のあらゆる著名NPOの創設時の姿を見れば、さほど問題ではないように思う。というよりも、問題ではないようにするようスタートアップをサポートする体制こそが、社会にイノベーションをもたらす上で重要な要素なのだと思う。
たとえば、このプロジェクトを聞いて真っ先に思い出すのが、カーン・アカデミーだ。数学などの教科解説の映像をYouTube上にアップしたものが大人気になり、現在月間600万人もの人が4400の映像授業を学んでいるという。これも創設者のサルマン・カーンがボランティアでアップしていたものに寄付者がつくようになり、やがてビル・ゲイツが注目し、ゲイツ財団が資金援助したことで一気に拡大し火がついた。Googleの資金援助も受けて、10ヶ国語以上に翻訳配信もされている。TIMEの「最も影響力ある人物100」でも2012年に選出されている。いわば、カーンさんは世界に教育革命を起こすNPOの国際スターとなったわけだが、米国ではゲイツ財団はじめ様々な財団や資産家、慈善事業家が、NPOスターを育てる役割を果たしている。
世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション
- 作者: サルマン・カーン,三木俊哉
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/05/24
- メディア: 単行本
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日本では最近、いわゆる社会起業家が注目されるようになり、おもしろい事業を展開する方々が各方面で現れてきた。とはいえ、それが世界的に注目され国際展開までできているかというと、まだまだというのが現状だろう。企業人では、古くは松下幸之助や出井伸之、最近では2013年のTIME100に選出された柳井正など、日本からも国際的スターは輩出されている。しかし、NPO界では、どちらかというと海外NPOの日本版を輸入する方がトレンドで、日本発の国際スターはまだまだ生まれそうにない。
経済大国であり、課題先進国でもある日本が、世界に提案できる新たな課題解決の手法は本当なら多数眠っているように思う。要はそれを発掘できていないか、育てられていないかだ。これは、日本で最大級の助成財団に勤める者として自戒の念も含めて書いているが、日本がその独自の技術と経験をいかして世界に貢献できるような体制をつくっていくことが必要だと強く感じる。
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