本山勝寛:まなブロ

独学で東大、ハーバード大学院に合格し、国際教育政策修士課程修了。アジア最大級の国際NGOである日本財団で、教育や福祉、NPO支援に携わり世界中を駆け回っています。日本と世界に「学びの革命」を起こすべく、学びのススメを綴ります。 『最強の独学術』https://www.amazon.co.jp/dp/447979610X/

日本からNPOスターは現れるか

先日、「五大陸ドラゴン桜」ことe-education代表の税所篤快さんと会って話をした。現役の早大生にして、バングラデシュで貧困層の高校生に自ら撮影した有名教師のDVD授業を無料提供し、地元トップであるダッカ大学合格に導いたのを皮切りに、ルワンダやガザ、フィリピンなど世界各地で映像授業による新たな教育プロジェクトを立ち上げている注目の社会起業家だ。詳しいストーリーは彼自身の近著に紹介されているので、お薦めしたい。

「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう

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20代前半にしてその行動力には圧倒されるが、話していると普通の大学生で、何かおもしろいことをしたいという気持ちと行動力、それと人を惹きつける人柄こそが彼の原動力のように感じた。本でも紹介されているように、失敗も多く経験し、大学生らしく浮き沈みしながらもプロジェクトを進めている。

私は職業柄、国内外のいろんなNPOを見てきたが、オリジナルな面白いアイディアを実現させるスピード感に溢れているという点では、彼のプロジェクトは海外のNPOにもひけをとらない。課題は大学生がボランティアで運営しているという組織基盤の弱さだが、他のあらゆる著名NPOの創設時の姿を見れば、さほど問題ではないように思う。というよりも、問題ではないようにするようスタートアップをサポートする体制こそが、社会にイノベーションをもたらす上で重要な要素なのだと思う。

たとえば、このプロジェクトを聞いて真っ先に思い出すのが、カーン・アカデミーだ。数学などの教科解説の映像をYouTube上にアップしたものが大人気になり、現在月間600万人もの人が4400の映像授業を学んでいるという。これも創設者のサルマン・カーンがボランティアでアップしていたものに寄付者がつくようになり、やがてビル・ゲイツが注目し、ゲイツ財団が資金援助したことで一気に拡大し火がついた。Googleの資金援助も受けて、10ヶ国語以上に翻訳配信もされている。TIMEの「最も影響力ある人物100」でも2012年に選出されている。いわば、カーンさんは世界に教育革命を起こすNPOの国際スターとなったわけだが、米国ではゲイツ財団はじめ様々な財団や資産家、慈善事業家が、NPOスターを育てる役割を果たしている。

前に紹介した就職ランキングトップにもなったTeach For Americaや、注目のチャータースクールKIPPも創設者がまだ大卒そこらの時点で企業家や財団から大きな支援がなされたことで、一気に拡大することに成功している。

日本では最近、いわゆる社会起業家が注目されるようになり、おもしろい事業を展開する方々が各方面で現れてきた。とはいえ、それが世界的に注目され国際展開までできているかというと、まだまだというのが現状だろう。企業人では、古くは松下幸之助出井伸之、最近では2013年のTIME100に選出された柳井正など、日本からも国際的スターは輩出されている。しかし、NPO界では、どちらかというと海外NPOの日本版を輸入する方がトレンドで、日本発の国際スターはまだまだ生まれそうにない。

経済大国であり、課題先進国でもある日本が、世界に提案できる新たな課題解決の手法は本当なら多数眠っているように思う。要はそれを発掘できていないか、育てられていないかだ。これは、日本で最大級の助成財団に勤める者として自戒の念も含めて書いているが、日本がその独自の技術と経験をいかして世界に貢献できるような体制をつくっていくことが必要だと強く感じる。

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