(145)今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。: 貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話
- 作者: 本山勝寛
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2018/02/09
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貸与型奨学金を返せない人が増えていることが社会問題としてクローズアップされている。そんななか、日本学生支援機構は、各大学の奨学金延滞率を先日公開した。支援機構のホームページでは、大学別の延滞率を検索することはできるが、各大学の延滞率順位を一覧することはできない。
これに対し、東洋経済オンラインが支援機構の情報をもとに独自集計を行い、全大学の奨学金延滞率ランキングを、同サイト上の記事「独自集計!全大学「奨学金延滞率」ランキング」で公開し話題を呼んでいる。記事の一部を抜粋すると以下の通り。
大学の奨学金延滞率は平均1.4%。1位は山口県萩市の私立大学である至誠館大学で、13.9%とかなり高い水準だ。また、5%以上の大学は22校に上った。延滞率の高さが目立つのが、やはり地方の私立大学だ。都市部と比較して、学生が就職してからの給与水準などに大きく影響を受けていることがうかがえる。一方で、国公立大学は地域にかかわらずランキング下位に固まっており、堅実さを見せている。
全体の大学延滞率平均1.4%は、改善の余地はあるものの、深刻な社会問題というほどではないようにも思える。「奨学金はサラ金よりも悪質」といった偏った言説がメディアの間で出回っていたが、冷静に過去のデータを踏まえたうえで、奨学金を借りるリスクよりも、大学進学するリターンが高いと判断すれば、奨学金を借りたらよいだろう。
一方で、一部の私立大学では、延滞率が最も高かった大学の13.9%や、2位以下も9.1%、8.3%と続いており、奨学金を借りた卒業生のおよそ10人に1人が延滞してしまっているという事実は、大学側としても重く受け止めるべきだろう。もちろん、大学内での貸与者の母数が少ない場合は、いたずらに批判したり、奨学金延滞率だけを取り上げることには注意が必要だ。
とはいえ、これだけ大学別の貸与奨学金延滞率がはっきりと公表されている以上、その大学の学生は、自分が奨学金を借りるかどうか検討している際に、有利子の場合の利率のチェックと同時に、自分の大学の延滞率をチェックする必要があるだろう。奨学金を借りてまでその大学に通うべきなのか、リスクとリターンをしっかりと考えて、大学選びや進学の是非を検討すべきだ。
また、大学側も奨学金説明会や資料配布のさいには、大学の奨学金延滞率の事実を伝えるとともに、大学としての教育方針や就職支援などを学生たちに説明すべきだろう。今回のデータ公開は大学別に限られているが、同じ大学でも学部によって延滞率が異なることが推測される。今後はより詳細なデータが公開され、学生本人がしっかりと検討し、判断できる環境が整うことを望む。
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