政府による配偶者控除の見直し論が現実味を帯びている。不思議なのはマスコミ各社が配偶者控除の廃止を「女性の社会進出」という美名のみ強調し、「子育て世代への増税」という点をはっきりと報じないことだ。
配偶者控除を受けているような専業主婦世帯は金持ちで、高年齢層というレッテルが浸透しているようだが、現実の姿とはかけ離れている。末子の年齢別専業主婦世帯の割合(2010年国勢調査)は以下の通りで、子どもが成長するにつれて(つまり親の年齢が上がるにつれて)、専業主婦の割合は低くなる。(参考論文)
0歳 70.9%
1歳 63.7%
2歳 58.4%
3歳 53.0%
4歳 48.7%
5歳 46.0%
6歳 44.0%
7歳 41.1%
8歳 37.8%
…
13歳 29.7%
17歳 28.0%
大半の世帯は、決して経済的に余裕があるからではなく、小さい子どもを育てるために必要に迫られて専業主婦業に務めているのだ。子どもの成長とともに手がかからなくなるにつれて、割合が如実に低くなっていることが、それを表している。
実際に専業主婦世帯を年収別(2011年子育て世帯全国調査)にみると、以下のようになる。
800万円以上 21.9%
600〜800万円 25.2%
500〜600万円 14.0%
400〜500万円 16.6%
300〜400万円 14.3%
300万円未満 8.1%
800万円以上の高所得層(800万円でも子育てに十分といえるかは定かではないが)は全体の2割程度で、大半は中間から低所得層だ。しかも、専業主婦世帯のうち12.4%は貧困ライン以下の収入しかない。
配偶者控除の見直しは、こういった基礎的なデータを踏まえたうえで議論しなければ、政策の方向性を誤ることになる。繰り返し述べるが、控除の単純な廃止は、若い子育て世帯への増税を意味する。しかも、4月から消費税が8%に増税され、さらに10%に引き上げられるという今、本当に行われるべきなのか、慎重に議論する必要があろう。配偶者控除を廃止して、無理やり家庭から外に追い出すことを考えるより(それにより保育ニーズを今以上に高め、税負担を高めることになる)、保育環境を整備し待機児童問題を解決することのほうが先決だろう。
私は先日も書いたとおり、子育て世帯に直接恩恵が届く児童手当の大幅増額か在宅育児手当の創設を「必ず」セットにしなければ、控除廃止は拙速に進めるべきではないと考える。(北欧で実施されている「在宅育児手当」については「ウーマノミクスと北欧の子育て支援」参照)あるいは、もし廃止するのであれば、民主党政権の子ども手当詐欺により廃止された16歳未満の扶養控除を復活させるか、配偶者控除廃止は高所得層のみを対象にすればよいだけのことだ。
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