自民党の公約から「配偶者控除維持」が抜け落ちた
衆院選が始まり、各党の公約が出揃った。各政策の公約比較は他の方々もされているので譲るとして、ここでは少子化対策・家族政策としての配偶者控除に注目したい。
自民党は先の参院選2013の政策集J-ファイル2013で、以下のように配偶者控除維持を明記していた。
社会の基本は「自助」にありますから、家族の助け合いの役割も正しく評価されなければなりません。その観点から、配偶者控除は維持し、児童手当との関係を整理した上で、年少扶養控除を復活します。
この公約にもかかわらず、配偶者控除廃止を含む見直しの議論を与党及び政府が開始したことが批判の的になったことは記憶に新しい。
では今回の衆院選2014の公約はどうだろう。政策集J-ファイル2014には以下のような記述がある。
社会の基本は「自助」にありますから、家族の助け合いの役割も正しく評価されなければなりません。こうした観点を踏まえつつ、働き方に中立な税制について、総合的に検討します。また、児童手当との関係を整理した上で、年少扶養控除を復活します。
なんと、「配偶者控除維持」がきれいに抜け落ち、「働き方に中立な税制」という文言に変わっているのだ。庶民にとって、特に子育て世代にとっては大きな政策変更にもかかわらず、この点については自民党からもメディアからも何の音沙汰もない。公約をこれまでの方針から変更したのであれば、しっかりと世に問うべきではないだろうか。
私は以前から書いているように、子育て世代への実質増税となる配偶者控除の単純で拙速な廃止には反対だ。出産を迎えた女性の半数が育児休業を取得できず、退職している現状のまま、配偶者控除を廃止すれば、子育て世代の負担が増し、少子化を加速させてしまう危険性があるからだ。
また、自民党が掲げる「社会の基本を自助とし、家族の助け合いの役割も正しく評価」という理念と相反している。自民党は、「家族の絆を深め、家庭基盤を充実させ、全員参加型社会の実現へ」と政策集でも謳っている。そういった理念や家族政策、少子化政策とも一貫した政策を期待したかったが、今回のこっそりと行われた公約変更は残念だ。
もちろん、配偶者控除のみが家族政策や少子化対策ではない。民主党政権が廃止した年少扶養控除の復活を記載していることは評価したい。ただ、これも衆院選2012や参院選2013で謳われていたが、一向に手をつける気配がないので残念だ。もし配偶者控除見直しがあるのなら、最低限年少扶養控除の復活は断行すべきだ。「家族の助け合いの役割を正しく評価」し、大企業正規と中小企業/非正規の育休給付金格差を是正するには在宅育児手当の導入も効果的だ。
ちなみに、民主党も配偶者控除見直しは公約として掲げ、「新児童手当」の導入と記載しているが、金額も明記されておらず、先の「子ども手当詐欺」の域を脱し切れていない。
野党がふがいなく、自民党一強の様相を呈してきたからこそ、慢心せずに各政策をしっかりと国民に問い、より良い政策を検討、実行していただきたい。
関連記事
・配偶者控除廃止は大胆な子育て支援なしで進めるべきではない
・「在宅育児手当」ってなに?
・若い女性の専業主婦志向の理由