まなブロ by 教育イノベーター本山勝寛

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

KUMON

『寺子屋グローバリゼーション−The Kumon Way』を読みました。

日本の公文式が世界に広まっているという話を、創立当時の背景からグローバル化した現在の取り組みまで扱っています。

現在、KUMONは日本を除いて、海外43カ国に8000教室を持ち、250万人が学んでいるそうです。
ここアメリカでも結構存在感があり、たとえば、先日紹介したNCLB法で、改善が必要と定められた公立学校生徒のための補習サービスを提供している会社にKumonが入っていたりします。(つまり、州や地区の補助金で「補習塾」に通える制度で、その塾のなかの一つということ。)

特にアメリカは、数学、英語(Reading)の基礎学力をいかに向上させるかが、大きなテーマになっているぐらいで、公文のような、数学を基礎からしっかり学んでいく補習塾のニーズが高まっています。
ハーバード・クリムゾンというハーバードの学内日報(Crimsonはハーバード大学カラーの深紅という意味。早稲田カラーとすごく似てます。)にも日本のKUMONのやり方に習え、というような意見が出されていました。
また、チャイニーズ・アメリカンやコリアン・アメリカンなどのアジア系アメリカ人が数学ができるのは、公文などの塾の力によるところが大きいというUCLA研究者による論文(Harvard Educational Reviewに掲載)もあります。実際に、公文を学区で活用して成功した例についてのペーパーなんかもあります。

もともと、学力と経済成長は正の相関を示し、特にその中でも、科学技術発展の土台となる数学にその傾向が顕著です。理数教育に力を入れてきた東アジアの国々(日本、韓国、シンガポール、香港、台湾)が、『アジアの奇跡』と言われる経済発展をしたということは有名です。

途上国でも、そういった経済・社会開発の観点から、理数教育の質をいかに向上させるかが大きなテーマとなっています。また、数学の成績がいいほど中退率、留年率が下がるというデータも出ており、中退・留年率が高い南米、アフリカで、数学教育をいかに改善するかは重要な課題なわけです。

そういったことを知るにつけて、「日本の理数教育は世界にもっと貢献できるのではないか?」という疑問がわいてきていました。

JICAも最近、理数科教育改善の支援を行っており、ホンジュラス、コロンビア、インドネシア、フィリピン、カンボジア、ガーナなど各地で実践しています。こういった理数科教育に特化した教育開発の関わり方は、日本独自のものと言ってもいいかもしれません。こういった開発支援の取り組みを、より戦略的に、より強化して行うべきだと、僕は考えています。

それと、もう一つ気になったのが、世界中でMathとReadingの効果的な学習機会を提供している「KUMON」というわけです。

一人ひとりにとって「ちょうど」の問題を、それぞれのペースで解くという哲学が「公文式であり、それが成功の秘訣とも言えると思いますが、ここまで世界に普及している理由は、創立者公文公(とおる)の夢にあったのかなぁとも感じます。

彼は公文式を通して世界平和に貢献したいという夢を抱いていたようです。
平和教育」を直接するのではなく、「読み・書き・計算」を世界中の人びとができるようになることによって、社会につながることができ、それぞれがしっかりと物事を判断できるようになるというビジョンです。

例えば、インドネシア政府と共同で行っている、学校に通えない子供に公文式学習法を提供するプロジェクトなどは、その例と言えるもしれません。
高齢者・障害者の脳の活性化に公文式が役立っているという例もおもしろいと思いました。

残念ながら、アフリカで現在教室が開かれているのは南アフリカのみのようです。
Kumon Wayが教育開発の取り組みと連結されても面白いなと感じました。

他にも、上記著作では、世界のKUMONを追いながら、各国の教育事情などが描写されていて興味深いです。
例えば、シンガポールでは、小学校の校長に成績順位がつけられ、成績上位者には英才校や実験校などが割り当てられるなどの措置がとられるようです。また、国家戦略として早くから英語を公用語にしたことで有名ですが、最近は中国語の促進に力を入れているともありました。

一方ドイツでは、日本と同じように「PISAショック」(国際テストで順位が急激に下がったことによる国民的危機感)があり、基礎学力向上に苦心しているようです。


国家戦略としての教育、ビジネスとしての教育、平和運動としての教育・・・教育にも様々な顔がありますが、これから益々グローバル化していくことは間違いないでしょう。

その中で、日本の教育論が、ゆとりを増やすか減らすかということを国内で議論する次元に留まるのではなく、世界の中で日本がどういう位置にあるのか、どういう役割を果たすべきか、どういう貢献の仕方ができるのか、ということを教育者から施政家までが考えていけるようになることを願ってやみません。


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参考までに、ハーバード・ビジネス・レビューにもKUMONのケースがあるようです。(ここ