本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

大学入試、2次試験は残しエッセイの導入を

国公立大入試の2次試験を廃止して、人物評価を重視した面接を導入しようという政府の教育再生実行会議の報道が話題になっている。日本の国公立大学の入試制度は、同一条件で一斉に同一の問題を解くため、公平性が担保されているという利点はある。たとえば、貧困家庭で海外経験などの「豊かな体験」ができなかったり、高校時代の成績は悪かったが一念発起して大学受験に挑戦するような人にも等しく門戸が広げられている。しかし、一律の入試と、予備校が煽る偏差値序列化により、入ってくる学生が画一的になってしまう弊害があることも否めない。

昨今の教育再生実行会議の議論は、この課題点を念頭にアメリカなど海外大学の入試制度を参考にしていると思われる。私は、その問題意識は必ずしも間違っているとは思わないが、2次試験を全面廃止することには反対だ。

現在のセンター試験は、選択式で問題のレベルも全高校生の平均に合わせているため、将来研究者を目指すような学生にとっては平易過ぎるし、機械的だ。私は東大の2次試験しか詳しくは知らないが、数学や理科、歴史なども、暗記だけでは歯がただず、理論を自分の頭で理解し応用できる力がないと解けない良問が多い。私なんかは東大の2次試験対策をするなかで、学問の楽しさを知ったくらいだ。その2次試験を全廃してセンター試験だけにするとなると、かえって暗記重視の機械的勉強を助長することになりかねない。トップ層の学力低下を招くことにもなろう。

では、現状のままでよいかというと、そうではない。報道では人物重視の面接評価を導入とあったが、私は面接よりもエッセイの導入を提案したい。しかも、2次試験は残したままでだ。面接は多数の受験生を対象に実施するのにかなりの時間と手間ひまがかかり、しかもどの面接官が評価するかによってかなりばらつきが出る。米大学の多くはOBOGがやっているが、日本でその仕組みを導入するのには無理があるし、評価方法も曖昧になる。しかも、米大学で面接はエッセイほど重要視されていない。

エッセイであれば、面接ほどばらつきが出にくいし、評価者もOBOGてはなく試験委員の教授などが一貫して行うことができる。内容もこれまでの人生を振り返り、その大学と専攻の志望動機などを書かせることで、自分が本当にやりたいこと、学びたいことを改めて深く考えるとともに、大学や学問領域、将来の職業などについて、真剣に考え、調べる好機となる。今の日本の大学受験において最も足りないのはこの部分だ。

エッセイの評価も難しいところはあるが、それだけで評価するのではなく、センター試験と2次試験の総合点にあまり差がない学生間のジャッジに活用するのがよいだろう。それだけであっても、合格のために1点を凌いで勉強する受験生は真剣に準備せざるを得ないし、エッセイを書くことを通してなぜその大学で学ぶのかを真剣に考えたプロセスが本人にとって非常に重要な経験になるに違いない。