本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

「等身大の東大について」女性セブン東大特集取材回答全文

女性セブン23号で東大特集が組まれ、取材質問に対して回答し、そのうち一部コメントが掲載されました。せっかくですので、私の回答全文を掲載します。

news.yahoo.co.jp

 

●質問:東京大学(以下東大)では、「1~2年次は教養学部に所属し、希望学部への進学は3年次からのため、はじめの二年間は進学選択のために必死に勉強せざるを得ない」と聞きます。こうした環境は、学生に学びを促すうえで、どのように役立っているとお感じになりますか?

 

回答)専攻を決める前に、12年時に全員が教養学部に所属し、理系文系の枠を超えて幅広く教養を広げれらる機会があることは、学びの幅を広げ、かつ自分が本当に深めたい専門分野を見出す期間として、効果的な仕組みだと思います。

私自身も、入学当初は宇宙物理学をやりたいと考えていましたが、途中で興味関心が広がり、システム創成学科という理系と文系を融合した新しい分野の専攻に進むことになりました。

「必死に勉強せざるを得ない」という効果もさることながら、学びの幅を広げ、リベラルアーツとしての全ての学問の教養の土台を身につけられることにより意義があると考えます。

 

 

 

●質問)東大には「逆評定」「法学部の書き起こし文化」など、学生同士で勉強をスムーズに行うための取り組みがあり、それはしばしば新入生や障がいのある学生の学習にも役立っていると聞きます(早稲田大学の類似する評定は「いかにラクに単位が取れるか」が重視されていて、書き起こしははじめから障がいのある学生限定かつ事前の申請が必要になります)。このように、東大生が自ら学びを良くしようという取り組みは、ほかにどのようなものがあるか、ご存じでしたらお聞かせください。

 

回答)12年時に、授業のノートをとってまとめる「シケプリ」と、それを担当する「シケ対」という学生の自主的な取り組みがあります。シケプリを頼りに授業をさぼってしまう学生もいるので、あまり良い取り組みとは言えないかもしれませんが、相互に勉強を助け合うという文化はあるのかもしせん。

 

 

●質問)やはり国内最難関の偏差値であることから、入学した時点で多くの東大生が勉強することに対しての楽しさや、自分なりの意義を見出しているのではないかと思います。実際、東大の学生の方々は、(机上の勉学に限らず)「学ぶ」ということについて、どのような考えで、どのような姿勢で取り組んでおられるのでしょうか。また、先生方は、どのような姿勢で学びを促しておられるのでしょうか。

 

回答)学問に対する真剣さや知的好奇心、探究心は全般的に高いように思います。

人によりますが、物凄い読書量の人もいて、私自身はそういった友人に刺激を受けて、本をよく読むようになりました。

先生方はどちらかというと教育より研究に重点が置かれているようにも感じました。12年時は大教室での講義が多く、授業の質は高かったとは言えないかと思います。

 

 

●質問)ご自身は東大での4年間を学費ゼロ円で過ごされたとおっしゃっておられました。東大の学生への経済的支援のシステムは、他大学と比較するとどのような点が優れているといえそうでしょうか。

 

回答)まず国立大学として授業料減免制度が充実しています。また民間の給付型奨学金も大学に案内が多数掲示されていて、各財団による選考はあるものの、比較的受けやすいのではないかと思います。私自身も給付型奨学金をある財団から受給していました。

 

 

●質問)優秀な学生を育てるには、「なぜ」と「異なるもの同士の組み合わせ」が重要だと、プレジデントにて書かれていました。東大でも、学生がこれらのことに接し、自ら考える機会や制度、風土は設けられているとお考えになりますでしょうか。また、それはどのような形でしょうか。

 

回答)「なぜ」を問われることは学問を深める際に比較的多いかと思います。ただし、欧米のように哲学や宗教学が盛んではなく、大学発祥のDNAとなっているわけでもないので、根源的な「なぜ」の問いを投げかけられるような文化風土は薄いように思います。

「異なるもの同士の組み合わせ」は欧米と比較すると非常に限定的だと感じます。学部生は留学生が少なく、また男子学生が多かったり、文化や宗教的バックグラウンドも多様ではないため、異質なもの同士がぶつかったり、化学反応を起こすようなことが少ないと思います。

それでも、多数の学部からなる総合大学で、12年時の教養学部制を大事にし、分野横断の学際的なアプローチを重視していることから、異なる専門領域同士の組み合わせは、国内の他大学より進んでいる印象です。

 

 

●質問)「日本国内で取引されるかぼちゃは、北海道産のものとオーストラリア産のものが多い。オーストラリアからかぼちゃが輸入されている理由を答えなさい」(‘15年の地理)という問題が出たことがテレビドラマで取り上げられ、話題になっています。劇中では「多角的なものの見方をして、ものごとの本質を考えられる人材を求めていることの表れ」だと言われていましたが、実際のところ、東大生や東大卒業生は、そのような考え方や視点の身についている人が、やはり多いのでしょうか。東大生・東大卒業生に多い思考・学び方の特徴や、東大で身につく学びの共通点などがもしありましたらお聞かせください。

 

回答)暗記した知識の量ではなく、基本的な知識や理論を駆使しながら自分の頭で多角的に論理的に考え抜くことは各教科の入試問題にも特徴があるように、大学として重要視している姿勢だと思います。その姿勢は入試から授業まで一貫しており、結果的に、そのような学生が集まり、巣立っていく傾向にあるように思います。

考えることが好きな人が多いですね。

 

 

●質問)「世界大学ランキング」などを見ると、東大は世界規模では36位で、東大でも優秀な学生は海外へ留学して活躍するケースが多いと聞きます。ハーバード大学、オックスフォード大学と、世界のトップの大学と東大の間には、どのような違いがあるのでしょうか。お考えをお聞かせください。

 

回答)集まる学生や教授陣の多様性、国際性が最大の違いです。ハーバードはじめ世界のトップスクールは世界中から一流の人材が集まり、その多様性のある環境が創造性を掻き立て、新たなイノベーションが生まれやすい好循環が生まれています。

 

 

●質問)一方で、国内の他大学と東大の間には、教育システムや環境、風土において、どのような違いがあるとお考えになりますか。

 

回答)国内トップのブランドは維持していますので、学力レベルの高い学生が集まり、国立大学として研究費も他大学より潤沢です。また、12時の教養学部制を持つことから学際的な風土も他大学より備わっているかと思います。歴史的な経緯から、政官学の関係の深さも一つの特徴だと言えます。

 

 

 

●質問)東大では、‘21年現在でも男子学生が8割、女子学生が2割と、男女の人数差がしばしば話題になります。現在、女子学生を対象とした住宅支援や活躍支援基金などの制度を充実させ、もっと女子学生を増やそうという取り組みをしているようです。東大では女子学生の比率が他大と比べてかなり少ないのは、どういった背景からだとお考えになりますか?

 

回答)入試の募集人数が文系より理系が多く、日本は女性よりも男性が理系を選択する割合が高いのが一つの要因かと思われます。また、文系のなかでも法学部や経済学部は比較的男性が多いですが、教育学部や文学部、教養学部よりもそれらの学部の人数の方が多いことも要因です。

女子学生を増やす意味でも、12年時のリベラルアーツを徹底する意味でも、文Ⅰ〜理Ⅲ制・理系文系枠を取っ払い、全教養学部で共通にするほうが私は良いと思います。

 

 

●質問)「東大だからこそ得られる学び」、またその一方で「いまの東大では得られない学び」とは、どのようなものでしょうか。ご自身の体験なども含めてお聞かせください。

 

回答)出会える学生や教授陣の質という点から国内ではやはりトップレベルだと思います。日本語で学び、研究するという点では最高の環境で、かつ低コストで、場合によっては費用ゼロで学ぶことができるので、コストパフォーマンスは高いです。

一方で、世界中から集まるトップレベルの学生や教授陣と多様性のある国際色豊かな環境で、英語で学べるかというと、かなりの限界があります。グローバル化の時代には物足りないところがあり、私自身はそれで東大卒業後、ハーバードに留学しました。

 

 

 

●質問)今後、国内または世界で求められる「頭のいい学生」「優秀な学生」とは、どんな人物だとお考えになりますか。また、現在の東大は、その教育システムや支援制度、風土によって、そうした学生を多数輩出する「最高学府」であり続けるでしょうか。お考えをお聞かせください

 

回答)絶え間ない好奇心と探究心を持って、新しい分野を開拓し、創造力を発揮できる人だと考えます。

正直なところ、今の東大には限界があると感じています。先に挙げた入試制度改革や、リベラルアーツ改革、留学生や教授陣の国際性推進の抜本的変革などやるべきことは多いですし、そのような改革に取り組めるマネジメント人材が必要だと思います。