本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

原理原則を知る〜日本財団13年の日々

日本財団13年の日々シリーズ。

新人研修4日目の記事を転載します。

 

2007年07月05日
日常業務の根拠


研修最初の一週間は、法律、寄附行為(財団の憲法のようなもの、会社でいう定款)、規則について特に学んだ。

日本財団は財団法人でありながら、「モーターボート競走法」という法律に基づいた組織で、「特殊法人」という位置づけでもある。公営競技の売上金を資金源としている以上、法律に基づいた活動から外れたことはできない。

その法律から演繹的に、寄附行為、そして規則ができあがり、日常業務が規定される。

人事の先輩が今日、「日常業務の中では規定などを意識しなくても仕事は回っていくが、実際は全ての業務に根拠があるんだ」というような意味のことを言っていた。

「原理原則を知る」とは、初日に理事長から強調された言葉だ。

実際の日常業務は煩雑で多忙、地味なものかもしれない。研修が終わり、いざ仕事が始まってみると、最初は言われたことをやるだけで精一杯になるだろう。
その中で、規則・法律の知識が、業務をスムーズに進めるためのノウハウに留まらず、組織のミッションを確実に遂行させるための「骨」となるよう、自分自身の骨組み作りも、偽証建築のようなものにならないように励まなければ、と思う最初の一週間だった。

 

組織のミッションを確実に遂行するための「骨」となるもの。それが法律であり、規定である。日本財団は公益財団法人となったため、現在では寄附行為が廃止され、定款が定められている。また、関連する法律、定款、規定、内規等々はすべてホームページ上に公開されている。

 

nippon.zaidan.info

 

日常業務の根拠には、目指すべき組織のミッションがあり、原理原則がある。その原則を知り、使いこなすとともに、ミッションに合わせて骨組みを再構築することもまた必要な行為かもしれない。

 

 

ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営

ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営

 

 

「掛け算によるイノベーション」日本財団13年の日々

日本財団13年の日々シリーズです。

 

13年前の新人研修3日目のブログ記事を転載紹介します。

 

2007年07月04日

「1+1=3」


関係団体の説明を聞き、挨拶回りにいった。
日本財団は、設立から関わっている関係団体が多岐にわたって存在する。主なものだけでも以下になる。

東京財団(政策提言)
笹川平和財団(国際研究、奨学事業)
・海洋政策研究財団
・ブルーシー・アンド・グリーンランド財団(海洋教育など)
・笹川記念保健協力財団(ハンセン病撲滅)
・笹川医学医療研究財団(ホスピス緩和ケア)
・日本科学協会
・日本音楽財団
・日本太鼓連盟

東京財団加藤秀樹会長や、笹川医学医療研究財団の日野原重明会長などは有名だ。
自分の関心分野以外にも、多くの分野に関わっており、刺激を受けると同時に、自分自身のアンテナもより広く拡げていかなければと思う。

一方、各団体は組織的には独立しており、そのミッションや事業内容くは異なる。それぞれが重要で意義のある事業であることは間違いないが、それと同時に、各団体や各事業が共通のテーマ・目的に向かってより連携できる体制を整えることが重要であると感じた。

たとえば、自分自身が関心のある「教育」というテーマを考えるなら、海洋事業における海洋教育、国際の奨学金事業、医療・福祉分野におけるボランティア活動、文化・スポーツにおいても多くが教育的側面を持っている。各団体がそれぞれの目的、得意分野と関連する中で教育と関わりのある事業を行っているのだろうが、教育というもの総合的に考えて効果的に資源配分できているかは分からない。
少なくとも、日本財団助成金を出している事業に関しては、優先順位を明確化した目的(例えば、「若年自殺者の低下」や「国際的リーダー人材の育成」など)を達成するための統合的、戦略的な資源配分が必要かと思われる。
昨日の話に出た、「1+1=3」という概念もそういったことと関連するのだと思う。「10+10=20」に留まるのではなく、「10×10=100」の成果を出すことが求められる。

まだ、自分自身は、助成の意思決定がどのように実施されているかもつかめていない段階だが、そういった観点からも、助成の意思決定や関係団体との関係を学んでいきたい。

(団体名・役職は当時)

 

1+1=2ではなく、1+1=3にする。

10+10=20ではなく、10×10=100にする。

13年前のこの発想を100%実践できているかといったら、正直まだまだ十分とはいえない。しかし、少しずつだが、その端緒は開かれ始めているかもしれない。

 

日本財団のグループ団体は上記よりもさらに新設団体が増え、創設と同時に私が出向した日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)もその一つだ。パラサポで培った経験をいかし、日本財団とのコラボレーションも少しずつ生まれている。

 

ブルーシーグリーンランド財団(B&G財団)とは教育事業のコラボとして、「第三の居場所」事業を協働して展開しており、つい先日その第一号拠点が大分県杵築市でオープンした。

www3.nhk.or.jp

 

日本財団は職員百数十名の小さい組織だ。各チームには数名しかいない。

少ない人数で大きな社会的インパクトを創出するには、単純な足し算を積み重ねるだけでなく、10×10=100に、100×100=10,000にする「掛け算の発想」を実践する必要がある。

 

掛け算によるイノベーションをどう生み出すか。

 

13年前に書いた入社3日目の自分の言葉が、今の自分自身に問いかけている。

 

 

アフタースクール代表平岩さん初の著者『「自己肯定感」育成入門』

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日本の放課後プログラムの充実に向けた先駆者に「放課後NPOアフタースクール」というNPOがある。

 

社会人一年目のときに出会った頃は、まだNPO法人格を取得される前後の小さな所帯だったが、いまやスタッフ230人を抱える日本の教育NPOを代表する団体に成長している。

 

団体創設時から、諸外国と比べて日本の放課後には子どもたちの成長につながる充実した放課後プログラムが絶対的に不足していることに課題意識を持って、取り組まれてこられた。この10数年にわたる団体の着実な成長は、日本社会においてまさに子どもたちの放課後の充実がニーズの高いテーマであることを物語っている。

 

その放課後NPOアフタースクールの代表が平岩国泰さんだ。先駆的なNPOの代表として、本も出されていたのではと勝手に思っていたが、実はこの度初めて本を出版された。タイトルは、『子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!「自己肯定感」育成入門』

子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門

子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門

 

 

塾や習い事のように、子どもたちの知識やスキルの向上を主目的とするのではなく、「市民先生」によって子どもたちの「やってみたい!」を伸ばすアフタースクールならではの現場からの気づきが豊富に紹介されている。

 

  • 目標は非常識なくらい低く設定する
  • 子どもを周りの子や兄弟姉妹、昔の自分(親)と比べるのではなく、「ちょっと前のその子」と比べる
  • 子どもに失敗させないように大人が気を配りすぎない
  • 大人(親や教師)がうまくいかなかった体験を子どもたちに語る
  • 子どもが生まれた日や小さかった頃の話をする

などなど、子どもの自己肯定感を伸ばすのに具体的なアドバイスが紹介されており、子育てや教育に参考になる。子育てに不安を感じている親御さんはぜひとも実践してみていただきたい。

 

「それでいいんだ」と気持ちが楽になるだろうし、なによりも子どもが笑顔になることで、子育てを楽しめるようになると思う。

 

日本の子どもたちも、親も、もっともっと自信を持って楽しく生きれる社会になるとよいなあと、著書を読みながら改めて感じました。

アメリカ海兵隊の組織論『知的機動力の本質』

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『失敗の研究』や経営戦略論で著名な野中郁次郎氏による、アメリ海兵隊の組織論的研究『知的機動力の本質』を読んだ。

 

今日のように変化の激しい現代社会では、時代の変化に合わせて常に新しい戦略を生み出してきた「自己変革の組織」であるアメリ海兵隊の組織経営のあり方が、実は企業や他の組織にも非常に参考になるという論だ。

 

敵の弱みを突いて敵のシステム全体の機能を破綻させる「機動戦」を得意とし、そのために俊敏な意思決定と現場リーダーの自律的な行動が肝になる。それを可能とする海兵隊員共通の訓練、組織の文化と構造、ルールがある。

 

機動戦を行う組織は、自律分散的・協同的なネットワーク型でなけらばならない。指揮統制は、現場の適応性や自発性を尊重する。理想的な兵士は、相互に信頼し合い、作戦行動に関するプロフェッショナルで自律分散型のリーダーシップをもつ人材だ。敵が予想もしなかった戦略・戦術を採ることによって、相手に「これでは勝てない」という認識を抱かせるのである。

 

指揮の哲学が強調していることは、第一に作戦の望ましいテンポを生み出すために、そして戦闘の不確実性、無秩序、流動性に最もよく対処するためには、指揮と統制の分権化が必要である。第二に大胆不敵、自発性、人格、意志の強さ、想像力のような人間の特性を取り入れるだけでなく、活用しなければならない。

 

意思決定のポイントは「二段階アップ(ツーレベルズアップ」」という方法にある。指揮官が隊員に命令する時には、自分の上官(全体目標)と自分(個別目標)の意図の「目的 What」と「理由 Why」を説明するが「方法 How」は任せる。部下に大局観を与えつつ、個別の文脈に適合させる実行方法は実行者に任せる。流動する状況では、目的を遂行する実行手段が機能しなくなっても、「目的」と「理由」を理解しておけば臨機応変にほかの手段を用いることができるからだ。指揮官は、部下にやり方を指示しない努力をするのである。そして権限を委譲したからには、部下の行為に対してみずからも責任を取る。

 

海兵隊だけでなく、変化の激しい社会のなかで意思決定のスピードど柔軟性が問われ、現場主義を貫こうとする組織には、大いに参考になりそうだ。

 

 

自分の存在なくして組織が成り立たないと思えるぐらいの意気込み、情熱が必要

日本財団13年の日々」シリーズです。

日本財団入会2日目、新人研修期間のブログ記事を転載します。

 
2007年07月03日
危機をチャンスに


研修二日目。

今日の常務の話で印象に残った言葉。

「自分の存在なくして財団が成り立たないと思えるぐらいの意気込み、情熱が必要」

正直、まだまだ日本財団に対して、そこまでのコミットメント、オーナーシップを持つことができていない。「新人」として慣れていく、学んでいくのでやっとだ。職員の顔と名前もほとんど一致しない。
しかし、ここで働く以上、そういう気持ちが自然と湧いてくるぐらい投入していきたい。

ほかに、財団の設立経緯、歴史、業界との関係についても聞いた。
正直、日本財団日本船舶振興会)は外からよく言われない場合も多い。それでも、自分自身が、悩んだ末に日本財団を選んだ理由の一つは、組織改革の努力が感じ取れたからだ。
今日の話で、その感覚が整理された。
平成6年頃、マスコミからの批判と競艇売上げ低下が重なり、非常に困難な時期を迎えた。
が、その頃から改革が始まった。危機をチャンスに変えられることは、人として組織として重要な力だと思う。
近年は小泉内閣が主導した特殊法人改革の渦中にあったが、他の公営競技(競馬、競輪、オートレース)団体よりも、日本財団は明らかに先んじて改革を行っていると思う。

これからは、時代・環境の変化や批判に対応する形で進めた改革から、時代を創造していく攻めの改革の段階に進んでいくべきだと思う。自分も、そのような歩みに参画していきたい。

また、業界、パートナー、ステイクホルダーの話も聞き、パートナーとの関係の重要性、お金を稼ぐ人たちの苦労を知ることの大切さに気づかされた。持続的に仕事を発展させていくためには、お互いがWin-Winの関係を築いていかなければならないが、それは自分たちのことだけを考えていては難しいのだと思う。

今日は多くのことを学び、完全に消化しきれたか分からないが、単なる知識として終わらせるのではなく、今後も課題意識を持って積極的に学び、仕事の中でも活かしていけたらと思う。

 

 

「自分の存在なくして財団が成り立たないと思えるぐらいの意気込み、情熱が必要。」

 

新人2日目、そこまでのオーナーシップ、コミットメントを持てていないと正直に綴っている。

12年半の歳月と幾多の経験を経て、その心境はだいぶ変わった。

 

 「時代を創造していく攻めの改革」

未だ道半ば、いや2〜3合目あたりかもしれない。

常に自己変革していかなければ、いつの間にか組織は衰退する。

 

「時代を創造していく攻めの改革」に対して、自分自身がコミットメントとオーナーシップを持つ。ほかの誰かがやってくれることを待っていてはいけない。変えられるのは自分自身だ。

 

【日本財団13年の日々】新人職員として初日に綴ったこと

先日38歳を迎えて、12年半前に日本財団に入会した頃の初心の想いを綴った拙著の文章を記載した。

 

どんなときにも、初心に立ち返ること、原点に立ち返ることは大切だ。

 

そんなことを思いつつ、4月から新たに入会する新人職員に対してどんな成長機会を提供できるだろうと思い巡らしていたら、12年半前に自分自身も新人として研修を受け、ブログを書いていたことを思い出した。

 

ということで、私の日本財団新人職員としての初日の感想を綴ったブログ記事を転載します。

 

 

2007年07月02日
いよいよ出帆!
日本財団での勤務初日を迎えた。
いよいよ新しい航海が出帆していくという緊張感と希望の入り混じる初日となった。

理事長から訓話を、しかも新人職員3人だけでいただくことができ、とても貴重な機会を与えられた。

「プロ意識」
「クリエイティブな姿勢」
「原理原則を知ること」
そして、「本質を見抜くこと」。

財団がメディアの批判に曝されていた時期の改革期における理事長ご自身の体験談も聞くことができ、とても印象的だった。

目の前の課題に対して、一つ一つ全てに対応すること以上に、本質的な最大の課題は何かを問い、そこに集中することが重要であることを学んだ。これから、財団での仕事が始まる中で、出会っていくであろう課題、そして挑戦に対して、その本質を見抜き果敢に挑んでいく姿勢を貫けるよう訓練を積んでいきたい。

今日も含めて研修期間は人事チームの皆さんにお世話になるだろうが、財団職員の皆さんとできるかぎり早く言葉を交わし、予定されている研修内容以外からも、いろいろなことを吸収していけたらと思う。また、新しくブログを開設したので、財団内に留まらず、外の人々にも広く刺激を与えられるような、取り組みを心掛けたい。

皆さん、これからどうぞよろしくお願いします。

 

「目の前の課題に対して、一つ一つ全てに対応すること以上に、本質的な最大の課題は何かを問い、そこに集中することが重要」

 

このことは今の自分自身や組織全体にもいえること。

我々は、すぐに成果のでやすい目の前のことを優先してしまい、時間がかかるし、目には見えにくいけど本質的で重要なことを後回しにしてしまいがちだ。そうすると、個々の努力が個別最適になってしまい、組織全体としての方向性を見失い、全体としてはパフォーマンスが高まらない状況に陥ってしまう。

 

本質を見抜いて、最大の課題に集中する。

 

原点とミッションに立ち返ること。

 

38歳を迎えて

先日、38歳の誕生日を迎えた。

 

人生の折り返し地点に達し、前半生を総括する時期になっていることを感じている。

論語に以下の有名な言葉がある。

子曰く、
吾れ十有五にして学に志ざす。
三十にして立つ。
四十にして惑わず。
五十にして天命を知る。
六十にして耳従う。
七十にして心の欲する所に従って、矩を踰えず。

 

三十代で基礎を確立する。どんなことにも挑戦し実現する素地を養い、自分の足でしっかりと立つ。そして、これから、人生の後半生を新たにスタートさせていく。

 

私が、日本財団に就職したのが12年前のこと。

その12年前に書いた文章が、処女作『僕の独学戦記』に残っている。

 

 仕事と言うと、給料や待遇、企業や職業の名声、業界の成長性、様々な物差しが判断基準になるだろう。僕自身、やはりそういうことも考えた。貧しい生活を続けてきた。借金も返さなければならない。苦労してきた親を楽にしてあげたい。高い給料のほうがいいに決まっている。しかし結局、僕は内定の決まっていた中で一番給料の安い、非営利の仕事を選んだ。日本財団という、国内外の公益活動に助成金を出している財団法人である。多くの人は聞いたこともないだろうし、人によっては快く思っていないところかもしれない。外から見れば、「なぜ?」と疑問に思う選択だったかもしれない。

 実際、僕自身が、「なぜ」を問い続けたのだ。なぜそこと出会ったのか。なぜそこに行くのか。なぜそこに惹かれるのか。天が自分に準備した道、それは一体何であるのか。苦悶の末、夢に近づく道がそこにあると信じるに至った。

 

日本を導いていける一人になりたい。

日本をして、世界を導いていける国にしたい。

 

 この果てしない夢に向かって、僕は今、小さな一歩を踏み出した。日本の非営利活動を活性化すること、社会の課題に果敢に挑む夢を持つ人を育てること、世界における日本と日本人の役割、「日本の天職」を模索すること。これがいま、僕が挑戦したいことである。

 これからも夢と現実の間に悩み続けるだろう。ときに自分の選択が間違っていたのではないかと不安にもなるだろう。仕事に失敗し、挫折することもあるだろう。

 しかし僕は、己の胸に決めたこと、天の前に誓ったことを、最後まで追い続けたい。才能がなくとも、お金がなくとも、環境がなくとも。僕はいつまでも飢え、渇き、欲していたい。この身に命があるかぎり。愛すべき人がいる限り。

 

 

12年前に書き綴ったその気持ちは、今も変わらない。

たくさんの経験を積み重ねることで、12年前よりもほんの少しだけ現実味を帯びてきているかもしれない。

自分自身がどう決断し、どう動くかによって、多少なりとも社会が変わりうる。そんな責任のある職務だ。

 

ひとたび己の中でやると決めたことは最後までやり抜く。

そんな愚直さが自分自身の取り柄であるなら、これからも愚直であろう。

飢え、渇き、欲していこう。

38歳。人生はこれからだ。