まなブロ by 教育イノベーター本山勝寛

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

自分をコントロールする力「実行機能」

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学力テストでは測れないが重要な力、非認知能力への注目が日に日に高まっている。ノーベル経済学賞受賞者のヘックマン教授の『幼児教育の経済学』や中邑牧子先生の『学力の経済学』などがベストセラーになることで、日本でもその学術的研究が紹介され、知られるようになってきた。

幼児教育の経済学

幼児教育の経済学

 

非認知能力(非認知スキル)とは、やり抜く力やコミュニケーション力、自制心、社交性、好奇心などを指し、いわゆる学力テストやIQで測定できる認知能力と対をなす概念だ。

 

日本財団が子どもの貧困対策で進める「第三の居場所」事業でも、勉強を教える学習支援だけでなく、子どもたちの非認知能力向上を重視したプログラムを用意しており、第三の居場所に通うことによる子どもたちの非認知能力の変化も検証している。

 

とはいえ、非認知能力はテストで測れないスキルであり、測定するのが認知能力よりも困難であることは事実だ。大事なのはわかるけど、どうやってそれを測り、育てたらよいのか分かりづらい。そんなモヤモヤした疑問に、森口祐介氏の新著『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』は一つの道筋を示してくれている。

自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学 (講談社現代新書)
 

 

同著で紐解かれるのは、非認知能力のなかでも、「実行機能」というスキル。

 

目標を達成するために、自分の欲求や考えをコントロールする能力を、心理学や神経科学の専門用語で「実行機能」と呼ぶ。この実行機能については、比較的研究が進んでいる。

 

子ども期における実行機能が低いと、健康面では循環器系疾患のリスクが高く、肥満になりやすく、性感染症になりやすく、歯周病になりやすい。また、ニコチン依存症や薬物依存症にらなりやすい。経済面では、年収が低く、社会的地位が高いとされる職業につきにくく、貯金が少なく破産しやすい。家庭面では、子どもがいる場合、シングルで育てることになりやすい。

このかなり衝撃的な研究結果を、デューク大学カスピ博士らグループが2011年に発表している。

 

実行機能の発達には、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係するが、子どもの環境的要因が、より重要だという。特に家庭環境が強い影響を与え、親の振る舞いや夫婦仲などの家庭の雰囲気、睡眠やメディア視聴、生活習慣も影響する。

 

また家庭環境の影響は強いものの、その他の環境やプログラム等により子どもの実行機能は鍛えられうることも示されている。この部分が非常に重要で、紹介されている「心の道具」プログラムなどは非常に興味深い。

 

非認知能力、あるいは実行機能が重要だということは明らかになってきているが、ではそれをどう育てるのか具体的な施策とその効果検証は世界的にもまだ道途上だ。本著はそのヒントを示してくれている。