子どもの貧困対策として、主に中学生を対象とした無料学習支援に取り組んでいるNPOキッズドアの理事長渡辺由美子さんの本、『子どもの貧困〜未来へつなぐためにできること』。
日本が直面している子どもの貧困問題について分かりやすくまとめられており、現場での経験や子どもたちの声、マクロのデータも紹介されていて、この問題を理解するのに最適な一冊。
無料学習会をしながらも、本当の効果はソーシャルスキルの獲得と語られている点は納得。つまり、成績向上だけでなく、社会のなかで他人と交わり、共に生活していくために必要な能力だ。約束を守る、決められた時間に到着する、必要な連絡を入れるなどで、困窮家庭の子どもたちには不足している場合が多々あると紹介している。だからこそ、子どもたちと親身になってコミュニケーションをとることで、子どもたちの非認知能力を育てることが重要だ。
ポール・タフの本『私たちは子どもに何ができるのか』でも、非認知能力を育むことの重要性とその方法が語られていたが、「非認知能力の育み」こそが子どもの貧困対策、そして広く「子どもの自立する力」を伸ばすための鍵となる。
渡辺さんの著作で紹介されていたキッズドアの取り組みで特に興味深かったのは、大学生ボランティア。様々なバックグラウンドの大学生がインターネットを通して個人で申し込んでいるという。そして、ボランティアを通して大学生自身が大きく成長したり、関わっている企業の社会人との交流の場にもなっている。大学の授業だけでは学べない何かがあるからこそ、多くの学生が申し込み、続けているのだろう。
子どもたち、親、大学生ボランティア、大学、企業、地域の方々などがチームを組み、互いを刺激し合って成長することで、ポジティブな循環が生まれる可能性を秘めている。日本財団でも、生活困窮家庭の子どもたちが安心して生活し、自立する力を伸ばせるような「第三の居場所」つくりを全国で展開している。
生まれ育った家庭の経済社会状況に関わらず、子どもたちが未来への希望を持ち、挑戦できる、そんな社会をつくっていきたい。