まなブロ by 本山勝寛 教育イノベーター・日本財団子どもの貧困対策チームリーダー

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

園で父の日が行われない〜離婚したら父親はいなくなる?

友人が子どもの保育園で、母の日は記念制作が行われたのに、父の日はなかったということを言っていた。先生に事情を聞くと、園の半数が母子家庭で、「父親のいない」園児に配慮したとのこと。同様に、父の日も母の日もやらない保育園、幼稚園はかなり増えているようだ。私の子どもたちが通う園では、似顔絵を描いて持って帰ってくれたので、私も妻も涙ぐんでしまうくらい嬉しかったが、そういう節目のイベントがなくなっていくのは、なんともさびしい限りだ。

日本でも、今や3組に1組は離婚するという時代に入っている。母子家庭、父子家庭が増えるのは当然で、母子のみの世帯数は約76万世帯、父子のみの世帯数は約9万世帯 (平成22年国勢調査)、同居者がいる世帯を含めた場合、母子世帯数は約124万世帯、父子世帯数は約22万世帯という。その理由の約8割が離婚だ。

ひとり親世帯の場合、子どもにとって「片親がいなくなる」という心理的なダメージが大きいのに加えて、経済的な困窮も深刻な問題だ。母子世帯の平均年間収入は223万円(就労収入181万円)で、児童のいる世帯の平均651万円と比べるとその差はかなり大きい。あまり問題視されない父子世帯も平均380万円とやはり経済的にも厳しい現実にある。母子家庭の14%は生活保護を受け、父子家庭でも8%にのぼるという。

こういった状況をつくってしまっている一つの要因として、大半の離婚家庭が養育費の取り決めをしていないことが挙げられる。離婚母子家庭で別れた元夫から養育費を受給しているのは20%にしかならないという。諸外国では協議離婚でも、養育費の取り決めや、面会交流の頻度や形式など、きっちりとした養育計画を作成して裁判所に届け出なければ成立しない。日本では親権者を決めて、二人の証人の署名があれば簡単に成立してしまうので、養育費が支払われない状況に陥りやすく、経済的困難を助長してしまっている。

離婚で壊れる子どもたち 心理臨床家からの警告 (光文社新書)

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養育費の問題だけではない。別居親との面会交流も、アメリカでは約80%が少なくとも隔週ごとに行われており、月一回あるいは休暇や特別の日なども含めると97%が面会交流を行っている。日本ではこれが28%にしかならない。「離婚先進国」であるアメリカでは、離婚家庭の様々な追跡調査が行われており、離婚後の子どもと別居親との頻繁かつ継続的な接触が子どもの精神的な健康にとって決定的に重要であると指摘されている。これが、「単独養育から共同養育へ」という考え方につながり、「共同監護法」が1979年にカリフォルニア州で成立したのを皮切りに全米に拡がった。この法律は「両親が別居あるいは結婚を解消した後に未成年の子どもに、両親との頻繁かつ継続的な接触を保証するのが州の公共政策である」とされ、子どもの養育の権利ばかりではなく、責任も共同していかなければならないと明記されている。

夫婦は自分たちで決めたのだから、離婚すれば夫婦ではなくなるが、子どもはたとえ父親と母親が離婚しても親は親である。離婚したら「父親がいなくなる」なんていうのは子どもにとって理不尽きわまりない。冒頭に「園で父の日を行わない」という例を挙げたが、母子家庭でも父親と定期的な面会交流が行われていれば問題はないのではないか。離婚は個人や家庭の問題であると同時に、今や社会の公共政策に関わる課題だ。本人同士が同意すればよいという、子どもを無視した安易な思想は捨て、しっかりとした養育計画の提出を義務化し、共同養育の体制を後押しすべきであると思うが、いかがだろうか。