まなブロ by 本山勝寛 教育イノベーター・日本財団子どもの貧困対策チームリーダー

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

3.2兆円支援もいいけど、アフリカ進出ならコマツと味の素にならえ


写真:中国の支援で建設されたアフリカ連合AU)本部(エチオピア

5年に1度の「第5回アフリカ開発会議TICAD V)」が横浜で開催されている。先日もブログで書いたが、これは5年間計1兆円のODAの成果を問う檜舞台だ。私の周りでも、アフリカ各国の友人たちが多数来日し、自分自身もここ数週間はアフリカ各国の大使館を回るなど、アフリカ週間となっている。とはいえ、国際開発業界ではTICADは大盛り上がりのようにも見えるが、一般的な関心は低いように感じてならない。安倍首相は6月1日の開会式のスピーチで、ODA1.4兆円と官民投資1.8兆円の計3.2兆円の支援を表明したが、数字だけが浮ついている感がある。

この数字を政府が出したのは、中国を意識してのことだろう。2011年に中国が初めて公開した『対外援助白書』によれば、これまでのアフリカ援助累計額は172億ドル(約1兆7千億円)で無償と有償が半々だ(年度別は不明)。これだけ見ても、日本の援助額規模に匹敵するが、もっと重要なのは貿易・ビジネスの規模である。2011年の対アフリカ輸出入額は日本が300億ドルなのに対して、中国は1660億ドルと大きく水をあけられている。アフリカ各国における中国の存在感は圧倒的で、そのやり方に批判があることも否めないが、日本が大きく出遅れていることは確かだ。

とはいえ、中国に援助総額で対抗するような愚策は取るべきでない。資源高を背景に経済成長する対アフリカについては、「援助から投資」の時代へと入った。日本企業のビジネス展開を側面支援するという観点からも、戦略的に国を選択したうえで集中投下すべきであろう。アフリカ53カ国の事情はそれぞれで、各国に等しく総花式で支援をしても決して中国に勝てない。そこでヒントとなる例を2つ取り上げてみたい。

1つはコマツ。グローバル企業として世界各国でビジネス展開しているが、アフリカにも古くから進出している。南アフリカを拠点に売上高を伸ばし、2010年615億円、2011年904億円、2012年は980億円と伸びている。総売上高1兆6千億円に対して、決して少ない数字ではない。2012年は中国やアジアでの売上が大幅減に転じたなかでの成長は大きな価値がある。アフリカは各国で金鉱山開発が進んでおり、それらの需要が成長を支えているわけだ。南アフリカというビジネス環境が安定している国を拠点に、周辺各国に展開している例といえよう。

2つ目の例は味の素。こちらも東南アジアや南米に進出しているが、アフリカではナイジェリアに1991年から進出。1袋5円の小分けにして売ることで成功し、2011年度に売上高が100億円を突破した。アフリカ進出を5-10年先を見据えた仕込みと位置付け、今年度にはケニアなどの東アフリカにも進出するそうだ。ナイジェリアは人口1億6千万人と世界第7位の人口大国で、消費マーケットは大きい。さらに人口増加率も高く、2050年には2億9千万人(2100年には7億人)になると予測されている。他にも2050年には、エチオピアコンゴ民、エジプト、タンザニアなどが人口1億を超え、アフリカ全体で現在の10億人から約20億人に倍増すると予測されている。アフリカは資源だけでなく、市場としても潜在的な成長マーケットなわけだ。

今後のアフリカは、こういった企業のビジネス展開なくして語れない。もちろん、貧困削減のための援助が必要とされていることも確かで、特に保健、教育、農業での支援は重要だ。中国ではできない日本ならでは貧困削減援助を、首相・閣僚が現地を回って積極的にアピールしながら、ビジネス進出支援をはかることで、3.2兆円も戦略的に有効に使っていただきたい。

ちなみに、近年のアフリカ経済の実像については、平野克己氏の『経済大陸アフリカ』が大変参考になる。

経済大陸アフリカ (中公新書)

経済大陸アフリカ (中公新書)