先日の8月15日で、日本は戦後72年を迎えました。日本はこれから、歴史の大きな転換点を迎えていくでしょう。そのターニングポイントは、様々な観点から考えると、2020年になることは間違いないと思います。
2020年には、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されます。1964年以来、日本にとって二回目の夏季オリンピック・パラリンピックです。高度経済成長を象徴した1964年の東京オリンピックでの、先進国に仲間入りする「成長」の段階から、2020年のオリンピック・パラリンピックでは本格的に「成熟」への時代に入っていきます。成熟社会として迎える第二回では、パラリンピックを成功させられるかが注目されているのも一つの特徴で、都知事や閣僚らも「パラリンピックの成功なくして、東京2020の成功はない」と、ことあるごとに強調しています。
私自身はいま、日本財団が100億円の拠出を表明して2015年に創設した日本財団パラリンピックサポートセンターでディレクターをつとめています。2020年の東京パラリンピックという絶好の機会をとらえ、障がいの有無に関わらず誰もが輝けるインクルーシブな社会の実現を目指して、人々が気づき、学び、行動していく機会をつくっていくために取り組んでいます。いわば、2020年のパラリンピックを通して、日本の社会を変えていくためのムーブメントを起こすために奔走しています。
2020年が日本にとってのターニングポイントになるという観点は、他のオピニオンリーダーも述べています。新興のスマートフォン用ニュースアプリである「NewsPicks」編集長の佐々木紀彦さんが『日本3.0』という新著を2017年初頭に出されました。佐々木さんは、東洋経済オンラインで編集長をつとめ、PV数を圧倒的に伸ばしたうえで、NewsPicks編集長に転職した注目の編集者・ビジネスパーソンでもあります。
いわく、「日本1.0」は、明治元年(1868年)から敗戦(1945年)に至るまでの日本近代「第1のサイクル」。「日本2.0」は、敗戦(1945年)から2020年までの日本近代「第2のサイクル」。この2つのサイクルを経て、2020年を境に、これからやってくるのが「日本3.0」と定義しています。
2020年は、1)東京五輪、2)安倍政権の終わり、3)東京の人口減少、4)団塊世代の引退、という4つの節目をひかえているため、時代的にターニングポイントとなるという理由からです。
70年周期説という歴史観、社会周期理論があり、既成の制度は70年で制度破綻し、新たな革命が起きるといわれることがあります。日本は、明治維新から77年で敗戦を迎えましたが、2020年には敗戦から75年が経過します。明治維新や戦後復興のときのように、「ガラガラポン革命」が起きるのではないか。むしろ、30代の若い世代が、「日本3.0」の革命を起こそうじゃないか、そんな警鐘のメッセージがこめられた本です。
私もこの考え方には共感するところがあります。日本はこれから急激な人口減少、超少子高齢化という「見えない国家的危機」に直面します。2020年以降は、東京2020オリンピック・パラリンピックという国民的な目標もなくなります。見えない危機のため分かりにくいですが、ある意味、黒船が来航し開国を迫られたときのような、あるいは、戦争に負けて国家制度の大転換を迫られたときのような、未曽有の危機に直面しています。この危機を「革命」の好機と変えられるかどうかは、これからの社会を担っていく世代次第だと思います。
そして、「日本3.0」の時代にふさわしい学びを実践するには、新しい学びの革命が必要です。「日本3.0」の時代には、教師中心の「教育の時代」から、学習者中心の「学びの時代」へと、近代工業化社会の既存の教育制度そのものを大転換しなければなりません。大学受験がピークで勉強が終わるのではなく、好奇心をもって独学を実践し、一生学び続けられる人が生き残り、時代を創っていくようになっていくでしょう。
「日本1.0」の時代には、福沢諭吉が「学問のすすめ」を著し、時代を象徴する大ベストセラーとなりました。「日本3.0」の時代にも、新しい時代にふさわしい新たな学び観の確立が必要なのではないでしょうか。
私は、新しい時代にふさわしい学びのあり方を<独学3.0>と定義して、その具体的な方法を新たな一冊の本『最強の独学術』にまとめました。孤独に勉強するのではなく、独立して自ら学び続けるための方法です。新しい学びが実践されることで、新しい「日本3.0」が創られるのだと思います。
※『最強の独学術』より引用編集
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