本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

マンガは読書を促進するのか

昨日から読書週間が始まり、毎日新聞が10月27日朝刊で、マンガと学びを切り口にした大型特集を展開した。毎日新聞社が全国学図書館協議会と合同で小中高校の児童、生徒を対象に実施した第61回学校読書調査の結果を踏まえたもので、社会面では「学校読書調査:本をよく読む子は、マンガも」という記事を掲載し、最近日本財団が発表した「これも学習マンガだ!」100選を全作品紹介、社説でも、「読書週間 マンガを学びの糸口に」と題し、以下の論を展開した。

中高校の児童、生徒を対象に実施した第61回学校読書調査で、マンガについての興味深い結果がまとまった。
 マンガを読んで感じたこととして「今まで知らなかったことがわかった」に7割以上が「はい」と答え、「時間のむだだと思った」と「言葉づかいが乱暴になった」には9割が「いいえ」と答えたのである。
 読書が学力の向上につながることは認めても、マンガは勉強の妨げと見る風潮が強かった。それとは異なる子どもの意識が浮かび上がる。(中略)
 子どもがマンガに娯楽を求める面は大きい。マンガを読んで感じたこととして「楽しい気持ちになった」を小中高の9割があげた。
 それでもマンガが好奇心を呼び起こし、学びの糸口になる可能性もあるのではないか。ノーベル物理学賞の受賞が決まった梶田隆章・東京大宇宙線研究所長が幼い時に、「鉄腕アトム」のお茶の水博士にあこがれていたという逸話は記憶に新しい。(中略)
 スマホなどを使い慣れた子どもたちは、本で調べるのを面倒に思うのかもしれない。出版不況はマンガ誌に及ぶ。マンガも読まない子が増えているなら、事態は深刻だろう。
 教育現場でのマンガ活用を含め、本の世界への橋渡しを工夫したい。

学校読書調査で、7割の子どもがマンガを通して「今まで知らなかったことが分かった」と回答したことは興味深い。これまで関心がなかった分野でも、マンガを通して興味を持ち、好きになり、はまることがある。「スラムダンク」からバスケが流行り、「ヒカルの碁」によって囲碁が流行った。私は「お〜い竜馬」で幕末にはまった。今は「天上の虹」の影響で持統天皇や飛鳥の女性天皇の時代に興味を持つようになった。

表題の「マンガは読書を促進するのか?」だが、少なくともマンガは好奇心を育み、広い意味での学びを促進するといえるかと思う。では、マンガが活字の読書を促進するのか。本をよく読む子どもはマンガもたくさん読んでいるという傾向は調査結果によって明らかになった。マンガをよく読む子どもが本も読むようになるかの因果関係はまだ明らかではない。私はこれも学びのデザイン次第だと考える。

私自身がそうだったように、たとえばマンガ「お〜い竜馬」のあと小説「竜馬がゆく」を読む、マンガ「大宰相」を読んだ後に「小説吉田学校」を読む。マンガも小説も、活字の本も織り交ぜながら読むことで、読書の幅と深さが増していく。先日紹介した「京大3兄弟の強烈オヤジ」の例でも、同じようにマンガから読書に入るルートを辿っている。

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学校や家庭、図書館などが工夫する学びのデザイン次第で、マンガは読書を促進する強力な学びの起爆剤になるだろう。社会がどんなに変わっても、教育現場は何十年と変わらない。しかし、学校図書館でも徐々にマンガを入れる動きが出始めている。「これも学習マンガだ!」の発表後も、多数の高校図書館や公立図書館から問い合わせがあり、冊子とポスターを掲示したいという要望があった。読書にも新しい風が吹くかもしれない。

読書の秋。本は私たちに新しい世界に連れ出してくれる「秘密道具」のようなものだと思っている。マンガも、小説も、学術書も、ぜひ手にとって読みふけりたいものだ。

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