本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

もしも「学べるマンガ」が図書館に充実していたら

先日、毎日新聞の特集ワイドや東京FMでインタビューを受け、本ブログでも「独学の時代がやってきた」という記事を書いたが、「教育の時代」から「学びの時代」へとパラダイムシフトしていくなかで、学びにおいて最も重要となるのは「好奇心」だ。トーマス・フリードマンは『フラット化する世界』で、IQよりも「CQ(好奇心指数)」がもっと大きな意味を持つとしている。

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)

好奇心は様々なところから育つ。大自然に触れて科学に関心を持ったり、家族や自分が病気になって医者(医学)に関心を持ったり、車やロボットが好きで物理や科学技術に関心を持ったりする。そういった「好奇心の種」をたくさん植えておき、育てることが「学びの時代」において教育に求められるあり方ではないだろうか。そんな好奇心の種となり、関心を引き出すきっかけになるという点で、私が注目しているものがある。マンガだ。

たとえば、学校の教科で好き嫌いが分かれるものに歴史がある。私はいわゆる歴史好きだが、歴史に関心を持ったきっかけは、漫画日本の歴史や漫画世界の歴史といった学習漫画シリーズだ。小中学生の頃、台詞を覚えるくらい熟読し、歴史が大の得意になった。東大生の半数以上が子どものころ学習マンガを読み、大学生全体よりもその割合が多いという調査もある。私自身は高校になると、マンガ『おーい竜馬』を読み、幕末への関心が急激に高まり、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を図書館で借りて、興奮して読んだ。自ら本を手にとって読破したのは初めてのことで、これをきっかけに本が好きになり、「本の虫」になった。

大学に入ると、マンガ『サンクチュアリ』や、小説「吉田学校」をさいとうたかおが漫画化した『大宰相』を読んで、それまで興味のなかった政治にも関心を持ったりと、マンガをきっかけにこれまで知らなかった世界に関心を高めたことがたくさんある。

歴史劇画 大宰相(1) (講談社+α文庫)

歴史劇画 大宰相(1) (講談社+α文庫)

マンガには、新しい分野に関心をひろげ、物事への好奇心を高める力がある。教育の時代から学びの時代へとパラダイムシフトし、好奇心を高めることが最も重要になってくる時代において、マンガのそういったポテンシャルを最大限にいかすことはできないだろうか。たとえば、もしも学校や公共図書館にたくさんの「学べるマンガ」が置かれてあったら、おもしろいことが起きないだろうか。いわゆる伝統的な学習マンガだけでなく、エンタメマンガだけど、特に新しい世界を発見させてくれるような好奇心を高める「学べるマンガ」だ。そして、そのマンガと関連するような小説や単行本、専門書も一緒に並べてある。そんな図書館が日本中にあったら、楽しくないだろうか。

そんな「もしも」を実現すべく、この度、「学べるマンガ」を多くの子どもたちに届け、学びの楽しさ、好奇心を高めるきかっけ、新しい世界を発見する喜びを提供しようと、日本財団で新しいプロジェクトを立ち上げた。漫画家の里中満智子さんやコルクの佐渡島庸平さんなどに有識者委員会に入ってもらい、いよいよ事業が本格スタートする。現在、複数ミッションから寄付金の活用先を選ぶ「総選挙」にノミネートしているので、ぜひフェイスブックの「いいね」で投票いただきたい。

世界は、まじめさだけではなかなか変わらないことも多い。非営利業界に長くいると、そのことを痛感する。ちょっとした遊び心をもって、異質なもの同士をつなぎ合わせることで化学反応が起きることがある。そんな遊び心満載の「学びの革命」を起こすべく、この革命を日本から世界にまで広げたいと思う次第だ。

頭がよくなる! マンガ勉強法 (ソフトバンク文庫)

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