マンガ「島耕作」シリーズの作者、弘兼憲史氏が「育児に熱心な男は出世しない」と述べたことが話題となっている。NEWSポストセブンの該当記事を抜粋すると以下の通り。
昨今、子育てを熱心にやるイクメン会社員がもてはやされています。しかし現実には、仕事のできる人間というのは家庭では必ずしも好かれていないし、逆に家庭的で幸せなパパというのは会社ではそんなに出世しない、という構図があります。
仕事ができて出世して、家庭でもイクメンで運動会にも参加して子供に好かれる。それはもちろん理想ですが、現実には難しい。
たとえば僕が上司の立場だとして、急遽、重要な案件が発生して緊急会議になるから残ってくれ、と部下に頼んだとします。その返答が「すみません、今日は子供の誕生日なので帰らせてください」だったとしたら、僕はその部下を仕事から外しますね。
たとえ子供の誕生日だとしても会社の重要案件となれば、給料をもらっている以上、やっぱり会社を優先すべきです。子供の誕生日、あるいは子供の運動会程度のことで会議をすっぽかすな、とは言いたい。
確かに、島耕作的な時代の価値観からすると、仕事だけでなく家庭も同じように重要視するイクメンは、上司としてあまり評価できないのかもしれない。私はビシネスマンガの金字塔を打ち立て、「加治隆介の議」といった政治マンガも描いた弘兼氏のことを尊敬している。
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ただ、私も「自称イクメン」で、これまで育休を2回取り、普段も残業せずに定時で帰ることをモットーに仕事をしている。特に、職場で初めて男の育休を取得するときには、職場での評価が下りはしないか、やり甲斐のある仕事ができなくなるのではないかと不安になったものだ。今では、2回の育休なんてなかったかのように、バンバンと海外出張が入り忙しく仕事をしている。評価に悪影響があったとは一度たりとも感じたことがない。
もちろん、常に家庭のことだけを優先して、仕事をおろそかにはできない。子どもの誕生日や運動会があっても、重要な出張があるときは涙を飲むことも多い。ただ、もし自分がその時間、その場所にどうしてもいなければならない案件でなければ、仕事を調整し、有給を入れることもある。子育てと仕事を両方重要視することは、二者択一ではなく、多くの「イクメン」が悩みと葛藤と試行錯誤のなかで挑戦していることだ。これは女性とて同じことだろう。
「イクメンは出世しない」のか。20年前ならいざしらず、現代において、そして10年後の日本においては、そのような社会ではないと期待したい。むしろ、取得率が2%前後というなかで、業務をやり繰りし、社内の根回しをして育休を取得するような人種は、ある意味チャレンジャーであり、イノベーターであるとは言えないか。「イクメン」こそが日本社会と企業のイノベーションの担い手となりうる、というのは言い過ぎだろうか。
少なくとも、子育て中で仕事も真っ盛りの30代、40代の層を敵に回すような上司は、それ以上「出世できない」ような社会になりつつあるのではとも思うのである。
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