今年の流行語大賞の呼び声高い(?)ダイオウイカ。世界初撮影の映像を放映した1月に続き、昨晩もNHKスペシャルでその後のストーリーが放映された。国立科学博物館でもダイオウイカを目玉にした深海展が開催中で1時間超待ちの人気を博し、六本木ミッドタウンでも関連イベントが行われていた。まさにイカづくし。私もイカにイカれてしまった人間の一人だが、なぜこんなにも人々を魅了するのか考えてみた。
もちろん、深海で生きたダイオウイカを撮影したのが世界で初めてという学術的価値があることは言うまでもない。そして、あの神々しく黄金に輝いたボディと、人間の心まで読み透かしたような眼光。あのインパクトは桁外れだ。さらに、「イカ」というネタにしやすいワードが話題の拡散に拍車をかけている。しかし、ポイントはそれだけじゃない。イカを何十年も追いかけるクレイジーなイカれた科学者たちの姿と、深海の暗闇でイカに出会ったときのあふれんばかりの興奮が、ドキュメンタリー映像から伝わってくるからだ。視聴者は彼らを通して、さらに知的興奮を増大させることができる。
最近私は、子どもなら誰もが考える「どうして勉強しないといけないの?」という疑問、そしてより普遍的に「なぜ人は学ぶのか?」という問いを真剣に考えている。おそらく、人類が今一度問い直さなければならない最も重要な問いの一つだと思っている。そして、最近こんな本も出ていたので読んでみた。
- 作者: おおたとしまさ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/06/20
- メディア: 単行本
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養老孟司、茂木健一郎、藤原和博、福岡伸一、坂東真理子、瀬戸内寂聴、内田樹、荒俣宏と錚々たるメンバーがこの問いについて、子ども向けと大人向けに真剣に答えている。「生き延びる力を身につけるため」「心の栄養を取るため」「自由になるため」「自分を輝かせるため」。。内容はどれもなんとなく分かるんだけど、なんとなく分からない、だけど大切なメッセージが含まれている、そんな本だ。なぜ勉強しなきゃいけないのか、なぜ人は学ぶのかという問いは、それを考えること自体にも意味があるので、読者の皆さんにもぜひ考えていただきたい。
私のなかでは、上記の先生方のお話もさることながら、ダイオウイカの窪寺恒己博士の言葉が一番しっくりくるのである。師曰く、「わからなかったことがわかって、新しい発見をすることは、なによりもわくわくする瞬間」だ。そして博士は子どもたちに向かってこう語りかける。
「だれも見たことがないものを、いつかきみの眼で見にいって下さい。」
深海の怪物 ダイオウイカを追え! (ポプラサイエンスランド)
- 作者: 窪寺恒己
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2013/07/04
- メディア: 単行本
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勉強するってことは、そんな最高にワクワクする瞬間への、ときに地道でときに楽しいプロセスなんだろう。そして、生きるためになんの役にも立たないくだらないことにでも最高の興奮を味わうことができるからこそ、人間は人間なんじゃないかなと。ダイオウイカとそれを追うイカれた科学者たちは、私たちにそんなことを思い出させてくれているのではなイカ。
p.s. 翌晩の深海シリーズ2、深海サメもめちゃくちゃ楽しかったです。