本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

友情とインキュベーション〜伝説のボロアパートから現代への警鐘

前回の韓国の大手塾広告を題材にした「友情と勉強」の記事が思いのほか反響があった。先日から参加しているブログメディア「BLOGOS」での記事アクセス数が1万を越え、ランキングでは全体で2位、ライフ部門で1位になった。
おそらく、韓国のつっこみどころ満載の広告ネタがそのフックとなったのだろうが、記事の本当のテーマである「友情が学びを加速し得る」という点について、この際、友情が歴史を創ってしまった一例をもう一つ紹介しておきたい。
それは日本が世界に誇る「マンガの歴史」だ。

錚々たる漫画家の名前を挙げたが、私の世代以上の方なら子どものころに楽しんだ作品がたくさん入っているに違いない。
では、この漫画家たちがみな、一軒の二階建て木造アパートに、台所もトイレも共同で一緒に住んでいたと聞いたらどうだろう?それは紛れもなくなく事実であり、その建物こそがマンガ伝説の地「トキワ荘である。
マンガの神様・手塚治虫が住んでいたその場所に、手塚治虫を慕う漫画家の卵たちが集まり始め、一緒に住むようになる。マンガ雑誌で連載を持つ者もいれば、まだ仕事がない者もいる。一様に貧乏で、格好は汚らしいが、毎晩のように集まって徹夜でマンガについて論じ合われた。

そのマンガ史の伝説を、手塚治虫藤子不二雄Aら本人たちが描いた『まんがトキワ荘物語』が最近になって祥伝社新書から復刊された。たかがマンガといってばかにせず、ぜひ手にとって熟読してみてほしい一冊だ。

このなかで、あのバカボン赤塚不二夫が作品中でこんなことを言っている。

赤塚「(石森章太郎の紹介ではじめて雑誌にギャクマンガを描いた結果、その連載が決まったとき)おれ、がんばるよ!そうだ石森氏、来月号のアイデアきいてよ。ペラペラペラ・・・」
石森「うん、うん。」
赤塚「ぼくはそのとき夢中だったが、石森はぼくのアイデアをよくきいてくれ、ぼくに自信をつけてくれた。いい仲間をもって、しあわせだった。」
赤塚「もし―ぼくがトキワ荘の住人にならなかったら・・・ぼくは現在まんがをかいていなかったかもしれない――」

赤塚のこんな話を知ると、バカボンのパパの決め台詞、「これでいいのだ!」の聞こえ方も変わってくる気がする。
無名の卵たちが寝食をともにしながら、お互い励まし合い、支え合い、遊び合い、語り合うことで、あの名作が生まれ、伝説的な超有名漫画家となって巣立っていった。日本のマンガの歴史、すなわち世界のマンガの歴史は、この一軒のボロアパートから生まれたいっても過言ではないだろう。さらに言えば、世界の読書文化の歴史にイノベーションを起こしたのが、このアパートでのしがない若者たちの徹夜談義だったわけだ。

「友情と勉強」というテーマからは、ちょっと話がずれたかもしれない。昔の話だと一蹴することもできよう。でも、私は理屈抜きで心動かされる。そして、歴史上から現在にいたるまで、イノベーションの背景にはこんな伝説がいくつもあるように思う。
友情は、「学びの加速器」にも、「イノベーションを産む孵化器」にもなり得るのでないだろうか。その「価値を生み出すインキュベーター」を、「大事そうに言われているけど本当はつまらないもの」と、いつの間にか置き換えていないだろうか。

教育界の皆さん、父兄の皆さん、ビジネスマンの皆さん、いかがでしょうか?
これは、過去のいい話への憧憬ではありません。現代への警鐘です。
さて、「これでいいのだ」ろうか?

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