外務省・国際交流基金が進めるアニメ文化外交で世界11カ国を講演して回った方の著書。世界各国で日本のアニメがどの程度受容され、人気があるかを知れる。特に、ミャンマーで講演し、盛況だったのは驚き。軍事政権で情報統制され、インターネットも驚くほど遅いミャンマーでも、一部ではあるが日本のアニメが観られていることは意外だ。ちなみに講演会参加者のうちドラえもんやNARUTOの認知率が20%。
昨年、ドラえもんは外務省からアニメ文化大使に選任されたが、「ドラえもん のび太の恐竜2006」の上映会を各国で行っており、今年3月までに100回実施されたそうだ。ドラえもんの映画は感動するものが多いし、子供に夢を与えてくれる。上映会をきっかけに日本のアニメがより浸透するようになるし、その後の継続性や拡がりまで練られているようだったら、私はいい企画だと思う。
著作としては、各国での講演の様子がレポートされていて臨場感があるところはよいが、逆に「文化外交」とタイトルを打っているくらいなら、外交としての戦略的な部分を外務省などはどう考えているかも書いてほしかった。というより、外務省自体がそういった外交戦略の立案までできていないというのが筆者の指摘なのだが、それなりに構想をもってそうな人にインタビューでもしてまとめていればよりおもしろい本になったと思う。
アニメや漫画など日本のポップカルチャーの海外人気は今や誰もが知っているところだが、それを「ソフトパワー」として外交などにどう活用するか/できるかは議論の余地があるところ。今のところ日本語学習者を増やすのには役立っているが、それ以降の絵は描けていないのが現状。関係者が集い議論が活発化することをのぞみたい。