『もう国にはたよらない』渡邉美樹
- 作者: 渡邉美樹
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (25件) を見る
ワタミ社長の渡邉美樹さんが学校、病院、老人ホーム、農業と、これまで「経営」の観点が弱かった非営利の分野に参入し改革をしていったビジョン、経緯についての本。日系BPでの連載コラムを編集したものです。
非営利の分野が経営的観点をしっかりもつ必要性は、アメリカ留学中によく感じていたことで、本の中でも参考になるポイントが多かったです。
アメリカなんかでは、NPO、非営利業界自体がものすごく強く、人材確保が進んでおり、MBA人材なんかもかなり入ってますね。そういうところからも、ビジネスセンス、経営的戦略眼のある組織は結構多いかと思います。結局は、分野の専門家だけでない組織経営に力ある人材を育成することこそが非営利業界を成長させるポイントなのではないか、と僕は思っています。
ハーバードでは、ビジネススクールで東大病院の臨床医の方も学ばれていて、そういう方々が古い現場の体制に苦しみながらも、がんばっていかれることを期待しています。
ただし、営利企業、株式会社として、教育や病院その他一般的に非営利と言われる分野をやるときの限界や課題も各所で見えることもあり、どうしたものかと悩んでいるのも、自分の中での現状かもしれません。だから、今は営利企業ではなく、非営利組織を選びました。そういう中、「理念の共有者としての株主」という観点には、大いに考えさせられました。そういう長期で物事を観ることのできる賢い株主と、株主にしっかりとした理念と戦略の説明責任を果たせるCEOが出るのなら、公益性が強い分野でもうまくいく可能性もあるかもしれません。しかし、それも人によってくる話なので、仕組みとしてどう構築するかは、必ずしも株式会社の参入が唯一の答えではないと感じています。
いずれにしても、考えさせられる内容です。渡邉氏のバイタリティには頭が下がります。非営利に興味ある人だけでなく、ビジネスマンが読んでもためになると思います。