ハーバード・ケネディスクールの前学長、ジョセフ・ナイ教授と会ってきました。
ハーバード松下村塾(ボーゲル塾)、日本ソフトパワー研究グループの活動一環として、これまでの議論の成果と自分たちがぶつかっている疑問点を、ソフトパワー概念の創出者であるナイ教授に直接ぶつけてみようということで、行われた企画です。
写真:ジョセフ・ナイ教授
印象に残った点をいくつか書き留めておきます
まず、半年間自分たちが議論した内容や問題意識がある程度評価されたこと。
ソフトパワーの概念は、提議されてまだ浅いですし、学問、政治の世界でさほどまじめに取り扱われていない感があります。当然、曖昧なところが結構あって、ああでもないこうでもないと話し合ってきましたが、グループ内で行ってみた一つのアプローチを、ナイ教授がだいぶ気に入っていた感じでした。
さらに上と関連して、日露戦争やアメリカの戦後日本占領政策など、自分たちが行ったケースに関して、特に個人に焦点を当てた部分に関心を示していました。
話はそれますが、自分の中でも、日露戦争講和条約締結時周辺に活躍した日米ハーバード人脈にはかなり興味があるのですが、ナイ教授も関心を示したことにやや感じるところがありました。
それと、ソフトパワーを政策として実践するものとして、時間がかかるけど何よりも効果があるのは交流プログラムだ。日本のJETプログラムというのはすごくいいということを言っていました。
このプログラムについて、僕もこちらにきて始めて知ったのですが、世界各国の青年を語学指導助手や交流員として日本に招聘する制度です。ハーバード教育大学院にも、この制度を使って日本で英語を教えていたという友人が結構います。
英語教育とソフトパワー強化政策をうまく絡め、さらに洗練・活発化していくと同時に、民間の留学斡旋機関や語学学校、交流団体との戦略的なパートナーシップを構築していくとよいなぁと感じています。(中国は中国語と中国文化普及を目的とした孔子学院なるものを世界中に推し進めています。)
また、中韓関係とソフトパワーに関連して、最近の「慰安婦問題」についても触れていました。
基本的には挑発に乗らずに未来志向の発言(「過去の日本と今の日本は全く違う」と言ってました)を繰り返していればいいんだというスタンスだったと思います。それでほんとにうまくいくのかはかなり疑問の余地もありますが、そういう発言は米側から中韓に向けてもっと発してほしいものです。
ここら辺は思う(悩む)ところもあるので、機会があればまた書きます。
それともう一つ。
日本のナショナル・ブランドがもしあるとしたら何だと思うか?と聞いたら、「非西洋で初めて民主化と経済成長に成功しながらも自国のオリジナル文化を保存し発展させている国」であるとか、よく言われる日本の特徴を挙げながら、そういったものを他が理解し共感できるような、Narrativeなストーリーが必要なのではないか、というようなことを言っていました。
これはすごく重要な指摘だと思います。拡大解釈するなら、中国で流行の『大陸の勃興』ではないですが、結局は、「世界史」をどう作り、日本をどこに位置づけるか、ということが大きな鍵なのではないかなぁと思っています。他文明と戦略に音痴な日本人に果たしてそんなことができるのか、まだまだ疑問な所もありますが、そういう人材を育成していきたいという自らの想いを再確認いたしました。
最後に、Softpowerの本にちゃっかりサインしてもらいました。
For Hiro,
with best wishes
For your softpower!
Joe Nye
と書かれています。
僕自身も、地位や肩書きではなく、魅力で人を惹きつけるようなソフトパワーを持つ人間となれるよう、今後も精進してまいります。
【追記】
3日連続レポート提出のため、現在徹夜2日目です。
課題に行き詰まって脳みそが働かないため、深夜4時、気休めにこの記事を書きました。
最後になってしまいましたが、今回の企画は、ソフトパワー研究グループのリーダーでもあり、ケネディスクールに通われるIさんによって実現することができました。この場をもって感謝の意を表すと同時に、氏のブログ「ケネディスクールからのメッセージ、ケネディスクールへのメッセージ」を紹介させていただきます。とても充実しているので、ぜひ読んでみて下さい。