先日報告したハーバード松下村塾(塾長:エズラ・ヴォーゲル)のほうも、徐々に進行してきているので報告します。
ハーバードの各スクールやタフツ大学フレッチャースクールの日本人留学生、US-JAPANプログラムで来られている研究者・ジャーナリストの方40名程で構成される勉強会。
日本の「外」で、日本研究第一人者の下、日本の将来を担う多彩な背景の若者(?)たちが、日本を考えるからこそ意味があると感じています。
人数が多いこともあり、政治グループと経済グループ、さらに、政治グループは「日本のソフトパワー」と「中国外交」、経済グループは「日本産業の国際競争力」と「格差社会」についてそれぞれ議論を深め、まとめていくという形になりました。
その中で、僕はソフトパワーのグループに入りました。
"Soft Power"とは、
ハーバード・ケネディスクール(行政大学院)の学長であるジョセフ・ナイ教授が唱えた概念で、
経済力(アメ)や軍事力(ムチ)に裏打ちされた強制力(ハード・パワー)ではなく、文化や理念の持つ魅力によって惹きつけることで、他(国、国民)の行動様式を、自分(国、国民)の望む方向に持っていく能力(パワー)
のことを言います。(正確な定義ではないので、興味のある方は本を読んでください)
何だか難しい表現ですが、僕はこれを聞いたとき、
「あっ、要するに女性が持つ力のことね!」
と勝手に解釈しました。
だって、娘も、彼女も、妻も、お母さんも、力こぶ振るわなくても十分にパワーをもってるじゃないですか。
特に家庭におけるお母さんの力は絶大というか。。
理念といったときにそれが当てはまるのかは、?のところもありますが、女性が特有にもつ論理的ではない論理(現代思想の先端を行くポストモダン的な)があることは確かな気がしますし。
それはさておき、この「女性的な力」を国家間のパワー・ポリティクスに応用させた概念が「ソフトパワー」なんじゃないかなと解釈しています。(*注:こういう解釈をしている人はあまりいないと思います)
さて、そこで僕は前々から考えていたことがあったのですが、
国や社会、文化・文明、あるいは思想までも、大きく分けて「男性的なもの」と「女性的なもの」があるのではないかと思うのです。
これはユングの概念「アニマ・アニムス」(男性の内なる女性性、女性の内なる男性性)にヒントを得たもので、ユングの弟子で最近まで文化庁長官をされていた河合隼雄教授の「母性社会日本」(参照:『母性社会日本の病理』)という概念に共感するところがあったからです。
「多中心」、「多宗教」、「非原理主義」、「受容性」
というったキーワードが当てはまる日本が、「母性社会」であると仮定するなら、
そして、「ソフトパワー」が「女性的な力」であると仮定し、その重要性がさらに高まっている時代が今日であると仮定するなら、
日本がこの特性を活かして国際社会における役割・位置を果たして行くべき、果たして行くことのできる時代なのだと思うのです。
20世紀に突入した一世紀前、日本は欧米列強国に抗して非西欧諸国で唯一、近代化を果たし強国入りしました。その1900年前後に
内村鑑三の"Japan and the Japanese"『代表的日本人』、新渡戸稲造の"Bushido"『武士道』、岡倉天心の"The Book of Tea"『茶の本』と、日本人が日本を紹介する本を英文で書き、次々と世界的ベストセラーになりました。
このとき彼らは、日本の特徴を書き記しながら、世界における日本の役割を説いていたわけです。
100年経った今でも、これらの概念が廃れるものでないことは確かですが、今は日本を新しく定義する必要があると感じます。
だから僕は、日本が世界の「母の国」として立つことを願って止みません。
今のところ僕は、
「包容戦略:母なるもの」と
「養育戦略:口うるさくておせっかいだけど気の効くお母さん」が考えられると思っています。
「文明の衝突」から「文明の包容」へ、という流れを国際関係において作るということと、
教育開発と保健政策を柱とした援助戦略を立て、実践するという二点です。
日本の教育(初等中等)と保健は世界でもトップレベルに位置すると同時に、それがお母さんの大きな役割であり、長期的な見えない力を発揮するからです。
もちろんソフトパワーはそれだけではパワーとしてまだまだ弱いところがあり、ハードパワーといかにうまく組み合わせていくかもポイントとなります。
これは、日本のハードパワーを高めるということと同時に、政治軍事のみでなく主義理念(日本にはこの理念が弱い)のパートナーシップをいかに組んでいくかが肝要であると思います。
そういったことを、若き官僚さんたち等を相手に、松下村塾で議論してきました。
次は不平等条約改正までのソフトパワーの役割をケースに議論していきます。
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