まなブロ by 本山勝寛 学びのエバンジェリスト・日本財団子どもの貧困対策チームリーダー

「学びのエバンジェリスト」本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

奨学金「批判」の誤解「Business Journal」掲載

biz-journal.jp

「Business Journal」にインタビュー記事「奨学金「批判」の誤解…滞納者の半数、返済義務を認識せず利用」(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト2018.03.29)が掲載されました。奨学金に関する部分を転載します。

 

日本学生支援機構奨学金に対する批判が多いなか、その制度内容が十分に理解されないまま利用が広がっていると指摘する声もある。現在強まっている奨学金への批判は、的を射ているのか。また、現在の奨学金は、どのような点が問題なのか。そして、今あるべき奨学金の姿とは。日本財団パラリンピックサポートセンターのディレクターで、2月に出版された『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』(ポプラ新書)著者の本山勝寛氏に話を聞いた。

 
――最近、日本学生支援機構奨学金制度への批判が強いです。その金利は上限3%ですが、適用されているのは市中金利で、数年来ゼロ%台が続いています。奨学金を批判する報道のなかには、3%を前提に返済金額を計算しているものもあります。

本山 同機構のホームページには「最高3%」と書かれているので、それだけを見ると「そんなに金利が高いのか」と思ってしまう。もっと細かく見ると実際の運用金利を確認できて、借りている立場からすると「そんなに高い金利ではない」と理解できるのですが、不勉強なまま書いてしまう人もいれば、運用金利を理解していても部数を伸ばすためにセンセーショナルに叩きたいメディアもいるのが現状だと思います。
 
――同機構の調査では、奨学金を延滞している人の48.8%が借りる前に返済義務を知らなかったということですが、意外でした。この人たちは給付型の奨学金だと思っていたのでしょうか。

本山 返せなくなった人は、それだけ誤解をしていた割合が高かったということですね。

――大学は説明会などで返済について説明しないのですか。奨学金は借金なんだよと。

本山 大学にもよると思いますが、私が借りた時の説明会では、そんなに詳細な説明がされた記憶はなくて、淡々と事務的に手続きの方法が説明されました。もしかしたら説明されていたのかもしれませんが、聞く側にも問題があったと思います。もちろん、連帯保証人欄への記入は説明されましたが、それがどういう意味なのか、連帯保証にはどんなリスクが伴うのかについて、学生がきちんと認識するレベルまで強調して説明されませんでした。説明する側にも問題はあるでしょう。

 

――返済計画のシミュレーションが説明された資料は渡されないのですか。
本山 今はどうなっているのか、わかりませんが、私が説明を受けた時は、細かい資料が一式渡されて、その中に入っていました。しかし、気づかなかった学生もいるのではないでしょうか。大学別に延滞率が公表されるようになったので、大学側も返済について詳しく説明したほうがよいと思います。

――学生が授業料減免制度を知れば、奨学金の負担が減るはずですが、大学側は積極的に広報しないのですか。


本山 広報していてもうまく伝わらないのと、授業料減免制度があることをメディアが報じないので、多くの学生が知らないのだと思います。

――奨学金の説明会で減免制度は説明されないのでしょうか。

本山 私の時にはありませんでした。減免制度については掲示板に貼りだされていました。もしかしたら奨学金の資料の中に入っていたのかもしれないとも思いますが、ただ、減免制度を知ることができたのは大学に入ってからでした。授業料を用意できなくて大学進学をあきらめてしまう高校生も少なくないので、そういう高校生が「授業料を免除されれば大学に行ける」と前向きになれるような広報が必要だと思います。高校の先生にも減免制度を知っていただきたいと思います。

――高校の先生は知らないのですか?

本山 知らない先生が結構多いと思います。


――給付型奨学金については、政府が制度をスタートさせますね。

本山 ただ、予算制限があるので、今のところ住民税非課税世帯、生活保護世帯、児童養護施設出身者などに利用できる学生が限られています。こうした対象には該当しなくても困っている学生は多く、大学生の2人に1人は奨学金を利用していますが、この層の問題解決にはなりません。

――そうなると、本山さんが提言されているように、クラウドファンディングによる奨学金の確保などが有効になってくると思います。

本山 クラウドファンディングなどで民間の力を活用するとか、大学が給付型奨学金制度をつくることが必要だと思います。ただ、日本ではこうした取り組みができていません。アメリカの大学に比べて、日本の私立大学は寄付金の募集活動が弱いと思います。

――日本の場合、私立大学の寄付金は卒業生から集めることが多いと思いますが、新設大学では、多くの卒業生が多額の寄付をできるだけの財をなす年齢になっていないという問題もあるのでしょうか。

本山 いえ、卒業生に頼らなくても取り組み方次第で寄付を確保できます。自治体と組んで、ふるさと納税から寄付を募っている大学の例がいくつかあります。

――お話を聞いていると、奨学金にまつわる問題は入り口に問題があると感じます。減免制度や給付型を知らないために大学進学をあきらめるとか、貸与型には返済が伴うことを理解するとか。

本山 おっしゃる通りです。日本学生支援機構はこれまで延滞金の回収という出口に力を入れてきましたが、これからは大学に対して、こういう説明をしてほしいとか、わかりやすい資料をつくってほしいなどの要請をすることが必要になってきます。現に同機構のホームページは、かなりわかりやすくなってきました。

――本日はありがとうございました。
(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト)