無理なく、楽しく、教養を深められる「ポートフォリオ読学術」ってなに?
本はそんなに嫌いではなく、実際にたくさん読んでいるという人が陥りがちなのは、流行りのビジネス書だけ読んだり、好きな作家の小説だけを読んだりしているパターンです。自分にとって読みやすいものだけに偏っていると、いくらたくさん量をこなしていても、教養の幅がひろがらず、深みもでてきません。
流行りの新刊を読みつつも、古典的名著と呼ばれるようなものもじっくりと読んだり、自分がビジネス書を得意分野としているなら、ときにはまったく別の分野である、たとえば歴史や心理学、芸術などの本を読むと、思いがけない発見や普段と異なるインスピレーションを得ることがあります。
拙著『最強の独学術』で紹介する<独学2.0>は、長期的に成果を出すための投資として独学を捉えていますが、投資の世界ではポートフォリオという考え方があります。
資産運用する際に、特定の金融資産だけに偏って投資をしていると、予想外の市場変動があったときに、資産を一度に失ってしまうリスクがあります。たとえば、一つの企業の株式のみを保有していると、株価が上昇している期間はよいですが、その企業の業績が不振になったり、不祥事があったりして、急に株価が下がった場合、資産を一気に失うことになってしまいます。
一方でポートフォリオの考え方は、様々な金融商品をバランスよく資産配分しておくことで、リスクを分散しながらも、長期的に安定したリターンを得る投資の方法です。国内外の様々な業種で複数の企業株式に分散投資しておくことで、たとえば為替変動があって一方の企業(輸出産業など)の株価が下がった場合も、別の企業(輸入産業など)の株価は上がり、リスクを回避することができます。また、株式投資によるハイリターンを狙いつつも、国債などローリスクローリターンの資産を一定割合保持しておくことで、市場変動があっても一定の資産を担保しておいたりします。そういった様々な金融商品をバランスよく投資することで、全体としてリスクを減らしながらも、銀行に預金しておくよりも長期的にはずっと高いリターンを得る投資が可能となるのです。
この投資手法にヒントを得て、長期的な学びの成果を狙う読書において、私は「ポートフォリオ読学術」を推奨しています(読書によって独学を進める方法「読学術」としています)。すなわち、流行のビジネス書だけを読むのでもなく、古典的名著だけを読むのでもなく、好きな作家の小説だけを読むのでもなく、様々なジャンルの本を組み合わせてバランスよく読む方法です。
たとえば、10冊の本を読むとしたら、2冊はベストセラーになっているビジネス書、2冊は自分の仕事の分野に直結する本、1冊は古典的な名著、1冊は小説、1冊はマンガ、1冊は最近会った人(知り合い)が書いた本、1冊(本)は学術論文/政府白書、1冊は海外書籍/雑誌などと、読書のポートフォリオを決めておきます。
最近の私の例でいうと、以下が読書ポートフォリオになります。
ビジネス書(2):『やり抜く力 GRIT』(アンジェラ・ダックワース)、『日本3.0』(佐々木紀彦)
自分の分野(2):『子供の貧困が日本を滅ぼす』(日本財団子どもの貧困対策チーム)、『世界に通用する一流の育て方』(廣津留真里)
古典(1):『旧約聖書』
小説(1):『高杉晋作』(三好徹)
マンガ(1):『マンガ旧約聖書』(里中満智子)
会った人(1):『高校一冊目の参考書』(船登惟希)
論文/白書(1):「PISA2015 OECD生徒の学習到達度調査」
海外(1):『Harvard Business Review』
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
- 作者: アンジェラ・ダックワース,神崎朗子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/09/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (13件) を見る
かっちりと各ジャンルの冊数を固定しているわけではありませんが、一つのジャンルに偏り過ぎないように意識して読書ポートフォリオを組んでいます。そうすることで、マンガから思いがけないインスピレーションを得て仕事のヒントになったり、小説から生きる活力を得たり、古典がトップリーダーと話をするときの話のネタになったりします。
この際にも、『マンガ旧約聖書』を読んだあとに、『旧約聖書』の原文を読むといったように、古典を読む前に関連するマンガを読むことでイメージつくりをしておくマンガ読学法で、堅苦しい古典も楽しんで読むことができます。「ポートフォリオ読学術」を長期的な学びの投資とし実践して、無理なく、楽しく新旧の様々な分野の本を読み進め、教養の幅を広げ、深めていきましょう。
※この記事は『最強の独学術』から引用編集しました。
<関連記事>