まなブロ by 教育イノベーター本山勝寛

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

子どもの貧困の背景に母子家庭の低い養育費受取率

ひとり親家庭に支給される児童扶養手当の、2人目以降の支給額増額を求める運動が始まり、各メディアにも取り上げられている。現状の制度では、1人目の子どもには月額最大で42,000円が支給されるのに対して、2人目には月額5,000円、3人目以降は月3,000円と相対的に低い。一人で多くの子どもを育てるのは、時間のやりくりや心理的な大変さに加え、経済的にも窮めて困難であり、2人目以降の支給額を増額すべきというものだ。

この運動の呼びかけ人には、多数のNPO代表者や著名人が名を連ねており、私もよく知っている方々もいる。運動の趣旨には大いに賛成で、自分自身もひとり親で、しかも当時は児童扶養手当の対象外だった父子家庭の5人兄弟で育ち、教育費どころか食べるものにも苦労したので、こういった支援が月3,000円でも5,000円でも増えることの「重み」を知っている。たとえば、将来のために大学受験しようにも、問題集1冊を買ったり、受験のための交通費にも苦労するので、そういった支援が将来の可能性を少しでも開く後押しになる。

子どもの貧困を解決していくため、児童扶養手当の増額という切り口に付け加えるとしたら、離婚による母子家庭の養育費の受取りの低さも指摘しておきたい。

児童普及手当ての受給者は1970年代までは年間約15万人だったのに対して、2002年には約76万人、2012年には約108万人と急増している。その主な要因は、離婚あるいは未婚出産による母子世帯の急増だ。児童扶養手当受給者108万人のうち、父子世帯が約6.4万人、その他の世帯が3.1万人、母子世帯が約98.6万人と9割以上が母子世帯だが、母子世帯のうち離婚による生別世帯が88.9%、未婚世帯が9.4%で、死別世帯0.8%に対して極めて高い割合だ。子どもの貧困率も、母子世帯の割合は半数以上にのぼる。

近年の離婚の増加が子どもの貧困を生んでしまっている、というのが現状なのだ。さらに離婚がそのまま子どもの貧困につながってしまう原因として、養育費の受取り率の低さがある。日本では現在、離婚家庭において父親が子ども(母子世帯)に養育費を支払っている割合は19.7%(2012年)と2割にも満たない。養育費の支払額は、父親と母親のそれぞれの収入によって変わってくるが、平均額は4.2万円だ。養育費が支払われるか否かは、児童扶養手当を数千円増額するよりも、大きなインパクトがある。

日本では養育費受給率が2割未満だが、たとえばアメリカでは、離別母親の56.9%は養育費支払い命令に基づく養育費受給権を持ち、37.5%が養育費を実際に受けているという。(参考記事)日本の養育費受給率の低さは、他国と比べても顕著であり、子どもの貧困の要因になっているといえる。

たとえ夫婦仲が原因で離婚したとしても、子どもにとって父親父親であり、養育される権利がある。日本は、離婚家庭の子どもと父親との面会率もきわめて低いが、夫婦の離婚が子どもと父親(または父子家庭における母親)をも完全に引き離してしまっている。子どもにとっては、単にお金の問題だけでなく、たとえお父さんとお母さんが別れても、お父さんは変わらずに自分のことを気にかけて愛してくれていると感じられることが、何よりも大きな支えになる。離婚したとしても、子どもの養育に最後まで責任を持つことが親として人として当然の義務であるという考え方に、社会全体が変わっていく必要があるのではないだろうか。そして、養育費の受け取り率を上げていくことが、母子家庭の子どもの貧困を少しでも解決していく、一つの道筋であるように思う。

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