本山勝寛:まなブロ

独学で東大、ハーバード大学院に合格し、国際教育政策修士課程修了。アジア最大級の国際NGOである日本財団で、教育や福祉、NPO支援に携わり世界中を駆け回っています。日本と世界に「学びの革命」を起こすべく、学びのススメを綴ります。 『最強の独学術』https://www.amazon.co.jp/dp/447979610X/

3回目の育休前に「男の育休キャズム越え」策を考えてみた

厚生労働省が2014年度雇用均等基本調査(速報)を発表し、男性の育児休業取得率の割合が昨年度は2.30%だったそうだ。2013年度の2.03%から0.27ポイントの増加、2012年度の1.89%から0.41ポイントの増加で、2011年度の2.63%に次ぐ値だった。近年は微増傾向にあるものの、依然として男性の育休取得は3%未満のマイノリティーのようだ。

私は7月中旬に第4子が生まれる予定で、第2子と第3子のときに続いて、3回目の育児休業を取得する予定だ。出産予定日からすぐに上の子の小学校と真ん中の子の幼稚園が夏休みに入るので、6歳、4歳、2歳の上の子たち3人を夏休みの40日間、毎日遊ばせて面倒をみることが私の主な役割になる予定だ。もし私が休みを取れず、妻が出産後の入院期間や母体を休めなければならない産褥期に、新生児を含めて4人の子どもたちを一日中一人でみるようなことは、現実的にかなり厳しい。そういった点からも、私の育児休業の選択は必要不可欠なものだと考えている。

3回目ともなると、職場でも私が「育休を取るイクメン」のイメージが定着化しており、1回目の時よりもすんなりと理解してもらえた気がする。とはいえ、全体の業務になるべく支障をきたさないよう、全体の日程調整や担当業務の共有と引継ぎには細心の注意を払い、あらかじめ準備をしてきたつもりだ。それでもやはり、周囲と上司の理解と協力があってのことであり、大変感謝している。

私の職場では、私に続いて育休を取得した男性が1人いる。まだまだ全員取得という状況ではないが、やはり1人、2人と周囲に増えていき、既成事実化していくことが必要なのだろう。マーケティングでよく使われるイノベーター理論でも、全体の2.5%にあたる「イノベーター」がまずは新しいものを進んで採用し、流行に敏感な13.5%の「アーリーアダプター」が採用することで他のメンバーに大きな影響を与えるようになる。そして、34.0%のアーリーマジョリティ、34.0%レイトマジョリティが続き、最後に16.0%のラガードが遅れて追随するといわれている。普及率が、イノベーターとアーリーアダプターを足した16.0%に浸透し、さらにアーリーマジョリティの間にあるとされる「キャズム(深い溝)」を越えると、新商品なり新サービスが普及すると言われている。男の育休はまだ「イノベーター」の領域に留まっており、いかに「アーリーアダプター」に採用してもらい、さらに「キャズムを越える」かが鍵になる。そこで、日本において男性の育休取得がもっと増えるための方策を考えてみた。

まず、男性の育児休業取得率を都道府県別でみてみると、圧倒的に広島県が高い。2007年度の男性育休取得率は0.6%だったのが、2012年度は7.2%に急増している。その間、2010年度に湯崎英彦知事自身が知事として全国で初めて育児休業を取得し、さらに男性社員の育休取得者1人あたり最大30万円の奨励金を中小企業に支給する制度を創設したことが要因の一つと考えられる。多くの中小企業は、男性社員が育休を取るような余裕がないというのは実情だろうから、そういった企業への奨励金制度によって、企業側にも大きな不利益にならないようにすることは効果的だ。ぜひ他の自治体も導入を検討していただきたい。ちなみに、広島県の2014年の合計特殊出生率は1.55と全国12位で、人口100万人以上の旧政令指定都市を抱える都道府県のなかでは、1.46の愛知県や福岡県はおさえて1位だ。

広島県は中小企業の奨励金制度を導入したが、大企業については、男性の育休取得率の公表を義務化あるいは奨励するとよい。多くの企業では、女性の育休取得率や出産後の勤務継続率を公表し定着化しているが、男性については一部積極的な企業を除いてあまり聞いたことがない。政府は「2020年までに13%」という目標を掲げており、目標達成のための具体的な行動計画が必要だ。

もう一点は、育児休業中の各家庭の給与の問題だ。大抵の場合、家計の柱になっている父親育児休業を取得すると、家計が厳しくなる。2014年から育児休業給付金は以前の5割から3分の2支給(6ヶ月間まで)に増額され、この点は多少改善されたともいえ、今後の推移を見守りたい。ただし、月給だけでなく賞与も実質上は育休期間分が差し引かれることになる場合が多いので、私が以前から提言しているように、男性(または1人親の女性)の育児休業に限っては8割支給にまで増額することを提案したい。男性のみにしぼれば、対象となる母数も今のところ多くはなく、財源確保も可能なはずだ。

ところで、男性の育休の話をしていると、女性としては1,2ヶ月の休みよりも、毎日定時に帰ってほしいという要望のほうが高いという話になることがある。育児は1ヶ月や2ヶ月で終わるものではない。出産直後に1ヶ月休んだとしても、復職後に長時間残業や休日勤務が続けば、結局は育児に従事できなくなり、女性にばかり負担がいってしまう。短期の育児休業にばかり目を向けるのではなく、普段の長時間残業をなくすことが、長期的な解決につながる。また、そういった環境つくりが、男性の育休取得の取り易さにもつながってくるだろう。長時間残業を減らすための方策は別途改めて考えてみたい。

以上、1)中小企業への奨励金、2)大企業の男性育休取得率の公表義務、3)男性育休給付金の8割支給、4)長時間残業を減らす努力、これらの施策を大胆に推進することで、男性の育休取得は現在の2.3%から、「アーリーアダプター」層へと浸透し、「キャズムを越える」道筋が見えてくるのではないだろうか。少子化対策は、国家の存亡を左右する待ったなしの緊急課題だ。あらゆる政策を動員し解決していかなければ、子どもたちに破綻した日本社会を残してしまうことになりかねない。

関連記事
2回目の育休前に「男の育休」を再考してみた
給付金増で男の育休は増えるか?