本山勝寛 SNSフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

石破大臣、地方分散できる独法を考えてみました

『石破大臣「国の機関 積極的に地方分散を」』というNHKの報道があった。

石破地方創生担当大臣は札幌市で講演し、「地方創生」に関連して、東京への一極集中を緩和するため国の機関の地方への移転を積極的に検討していく考えを示しました。
この中で石破地方創生担当大臣は、「『地方に会社を分散した方がいい』とよく言われ、実際に本社などを移した会社では豊かな暮らしができるようになった。ただ、これが全国的にははやらないので、地方に移転した企業の法人税をまけるなど、いろいろなアイデアを国で検討する」と述べました。
そのうえで石破大臣は、「国でもいろいろな機関を地方に分散させていくことを真剣に考えなければならない。地方に持って行ったほうがよりいい機関もあるのではないか」と述べ、東京への一極集中を緩和するため、国の機関の地方への移転を積極的に検討していく考えを示しました。

私はかねてより、地方創生と少子化対策、災害対策として首都機能移転を主張しており、その点からはやや物足りないが、担当大臣による一歩踏み込んだ発言として歓迎したい。

石破大臣の言う「国の機関」が具体的に何を指しているか分からないが、国会や本省そのものである場合、霞ヶ関のかなりの抵抗が予想される。本当はそこまで政治決断できてこそ初めて、東京一極集中の是正が可能となるスタート地点に立てるわけだが、現実的にはすぐにできるわけではない。そこで、独立行政法人を地方に移転させることで、部分的ではあるが、首都圏への一極集中を緩和させ、地方活性化につなげる現実的案を考えてみたい。

現在、独立行政法人は102法人あり、国の年間財政支出は3.1兆円、常勤職員数は14万人だ。これらの法人本部の大半は東京または首都圏に集中している。具体的に職員数の多い法人を見てみよう。

国立印刷局 4470人 東京都港区
高齢・障害・求職者雇用支援機構 3891人 千葉県千葉市
都市再生機構 3557人 横浜市中区
宇宙航空研究開発機構 2167人 東京都調布市
国際協力機構 1889人 東京都千代田
国立国際医療研究センター 1746人 東京都新宿区
国立がん研究センター 1699人 東京都中央区
日本貿易振興機構 1543人 東京都港区
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 1597人 横浜市中区
水資源機構 1460人 埼玉県さいたま市
科学技術振興機構 1349人 埼玉県川口市
海洋研究開発機構 1013人 神奈川県横須賀市
国立成育医療研究センター 960人 東京都世田谷区
水産総合研究センター 932人 横浜市西区
住宅金融機構 921人 東京都文京区
東京都統計センター 841人

この他にも、数百人規模で首都圏に存在する独立行政法人は多数ある。職員数が千人規模ということは、家族も含めると4〜5千人が居住することを意味する。東京や首都圏では誤差の範囲だが、地方にとっては大きな数だ。

上には挙げなかったか、職員数数千人規模の独法でつくば市に本部を置く法人も多い。つくばの研究学園都市のように戦略的に地方都市を「創生」することは大いにありだと思う。そういった明確な意図なく、ただ霞ヶ関が近くて便利だとか、首都圏においておけば国家公務員が生活しやすいとか、そういった惰性で所在地を決めているところは地方移転を真剣に検討すべきではないか。

たとえば、国立印刷局は全国に7工場あるうちの3工場は東京で本局が虎ノ門だが、どのくらいその必然性があるのだろう。国立だからといって東京にある必要はないし、首都直下地震のリスク回避のためにも、もっと東京から分散すべきだ。国立の医療系研究センターも東京に集中しているが、たとえば医療都市を標榜する神戸や熊本、あるいは福島などにあってもよいのではないか。

独立行政法人以外にも、たとえば観光庁や復興庁、特許庁海上保安庁など庁からまずは地方移転を進めることも考えられるよう。東京の一極集中是正は、国にもできることがあくさんある。石破大臣には、予算をばらまくだけの当たり障りのない政策ではなく、既得権益にも踏み込む大胆な政策を進めていただきたい。

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