本山勝寛:まなブロ

独学で東大、ハーバード大学院に合格し、国際教育政策修士課程修了。アジア最大級の国際NGOである日本財団で、教育や福祉、NPO支援に携わり世界中を駆け回っています。日本と世界に「学びの革命」を起こすべく、学びのススメを綴ります。 『最強の独学術』https://www.amazon.co.jp/dp/447979610X/

配偶者控除廃止は大胆な子育て支援なしで進めるべきではない

5歳、3歳、0歳の子どもがいるので、現在は妻が専業主婦業に従事している世帯として一言。配偶者控除の廃止はあまり単純に、拙速に進めるべきではないのでは。

配偶者控除は、大半の場合が子どものいる世帯への子育て支援の意味合いがある。しかも、育児休業制度が現在ほど整備されていない(現在でも十分ではないが)時代に、やむなく退職して専業主婦になり、低賃金のパート以外再就職もままならない状況で、主婦業を選ばざるを得ない層もかなりいる。

配偶者控除に所得制限がないため、お金持ちの優遇制度という批判もあるが、ボリュームとして多く含まれているのは中間所得層で、決して余裕があるわけではない。私なんかは年収500万円そこらだが、0歳児を含めて3人も小さい子どもがいると、今は専業主婦という選択肢以外は考えづらい。ものすごく子育て支援環境の整っている企業に勤めていたら育休で復職という選択肢もあったかもしれないが、現在の日本でそんな職場環境はまれだと言えよう。貸与奨学金の返済も続いており、配偶者控除廃止という名の増税が実施されれば、かなり家計に重くのしかかることになる。

そういった低所得〜中間所得層の専業主婦世帯にとって、配偶者控除の廃止は、子育て世代への増税を意味する。万が一、それにより確保された財源が効果的な子育て支援に十分にあてられない場合、子どもを産み育てたいというインセンティブが減じることになりかねない。

女性が就業しやすい環境を整えることは大いに進めるべきであるが、それによって少子化が進んでしまうようでは元も子もない。確かに、103万円の壁が就業意欲を抑制したり、高所得層にも一様に控除となっているなどの課題があることも確かだ。そういった課題点の部分を制度設計し直すか、もし配偶者控除廃止ということであれば、必ず大胆な子育て支援をセットにする必要があろう。

控除廃止を賛成している方々も、子育て支援をセットにと主張されているが、往々にして増税分はうやむやになって消えてしまうことが多い。子ども手当創設とセットという名目で扶養控除が廃止されたが、蓋を開ければ、月額2万6千円は支給されず、児童手当に戻ってしまったのは記憶に新しい。残ったのは扶養控除廃止(縮小)という子育て世代を狙い撃ちにした増税のみだ。配偶者控除の廃止も同じ轍を踏まないとは限らない。

私は、仮に配偶者控除を廃止するとしたら、かつての民主党が公約したくらいの子ども手当案を大胆に実施すべきだと思う。財源が足りないのなら、第二子や第三子以降を増額するといった設計も考えられよう。

あるいは、全世帯に広くではなく、配偶者控除廃止が専業主婦世帯の増税であることを考えると、たとえば私が前から主張している在宅育児手当の創設も考えられる。これは、税金があてられている保育園に預けていない家庭に対してその税金分の一部を手当として補助する北欧で実施されている制度だ。この制度の場合、自営業や中小零細企業非正規雇用などで育休をやむなく取得できない層にも恩恵が届く。また、配偶者の給与から控除されるのではなく、将来の納税者を育てあげるという「人材育成業」に勤しむ本人に国から手当=「給与」が支払われるといった構図となり、子育てに対する評価も変わってくるように思う。

ということで、配偶者控除廃止はそれ単体で進めると、子育て世代への単なる増税に過ぎないので慎重であるべきということと、もし廃止するのであれば、児童手当の大幅増額や在宅育児手当の創設などの大胆な子育て支援施策を「必ず」セットにすべきだということを主張したい。

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