本山勝寛:まなブロ

独学で東大、ハーバード大学院に合格し、国際教育政策修士課程修了。アジア最大級の国際NGOである日本財団で、教育や福祉、NPO支援に携わり世界中を駆け回っています。日本と世界に「学びの革命」を起こすべく、学びのススメを綴ります。 『最強の独学術』https://www.amazon.co.jp/dp/447979610X/

育休給与100%カバーの市、今後の出生率と男の育休を注視したい

「育休中も賃金100%へ 給付金との差額支給」という共同通信の以下の記事を目にして驚いた。

埼玉県北本市は十四日、育児休業を取得した市民を対象に、国の給付金制度に上乗せする形で、休業前の月給を全額、市が独自補償する制度を四月一日から始めると発表した。(中略)国の現行制度では、雇用保険加入者が育休を取得した場合、子どもが一歳になるまでの間、雇用保険から賃金の50%が支給されるケースが一般的だ。政府は一月末、この支給割合を休業開始後六カ月間は67%に引き上げる改正法案を閣議決定四月一日からの施行を見込んでいる。
北本市の制度では、子どもが一歳になるまでの間、雇用保険からの給付金で100%に足りない差額分を市がカバーする。(中略)市は二〇一四年度の対象者を約百二十人と想定し、同年度当初予算案に関連費用一億六千三百万円を盛り込む。

自治体としてはかなり大胆な施策であり、まずはその果敢な決断を評価したい。これから育休を取得する人にとっては、安心して子育てに集中できる、かなりありがたい制度だ。「そんなに手厚くてもいいの?」と思う方もいるだろうが、高い出生率を維持しているノルウェーでは100%の手当(最長42週、最長52週を選択した場合は80%)、スウェーデンでも8割の手当が保障されている。もちろん、北欧はそれを可能にするだけの高税率に支えられており、日本が国単位で実施するのにはやや無理がある。しかし、自治体レベルで予算が確保できるなら、北本市のように特色のある施策を打つことは大いに価値があるように思う。

調べてみると、北本市は近年出生率が低下しており、平成19〜23年の合計特殊出生率が1.09と埼玉県の1.21よりもかなり低い。他にやるべき施策もあるのではないかと思う一方、育休給付金100%が今後の出生率の推移にどう影響を及ぼすのか注視したいところだ。

さらに、私が注目したいのは、男性の育休取得率がとのように変わるかだ。男の育休はただでさえ少ないのに、2012年は1.89%と2011年の2.63%から減少している。もちろん、社会の慣習や考え方が大きいことは言うまでもないが、同時に、給付金5割では多くの家庭で一家の家計を支えている男が取得するには足りないという経済的理由も考えられる。(関連記事:給付金増で男の育休は増えるか?)これが、北本市のように給付金100%によって、男の育休取得率が増えるのかは大いに注目したいところだ。

もちろん、給付金100%で、問題が全て解決されるわけではない。特に、非正規雇用や中小企業なとで育休を取得できない方には恩恵が届かず、逆に格差を助長してしまう制度だという見方もできる。本来なら、給付金を増やすよりも、まずは誰でも育休取得できるように雇用環境を整備すると同時に、取得できない場合でも何らかの保障を提供することを優先すべきだ。この点については、以前にも紹介したように、フィンランドノルウェーの「在宅育児手当」が参考になる。すなわち、「育休」という括り方ではなく、保育園に預けずに家庭で育児をしている期間は誰にでも一定額(フィンランドの場合は月約5万円)を支給する仕組みだ。財源を雇用保険ではなく税金とするなら、この制度の方が公平だ。(関連記事:ウーマノミクスと北欧の子育て支援

ということで、北本市の今後の動きを注視するとともに、他の自治体においてはぜひとも子育てしやすい社会の実現に向けて、特色ある政策を実施していただきたい。