まなブロ by 本山勝寛

「学びのエバンジェリスト」本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

「よく遊ぶ子は賢くなる」は本当か

NHKがこんな報道をして話題になっていた。

「よく遊ぶ子は賢くなる」調査まとまる(2月13日)

「小学校入学前の子育てで意識していたこと」について尋ねたところ、偏差値68以上のいわゆる「難関大学」に合格するなどした子どもの保護者の35.8%が「思いっきり遊ばせること」と回答したのに対し、そうでない子どもの保護者では23.1%にとどまっていました。
また、難関大学合格者などの保護者の24.1%が「好きなことに集中して取り組ませること」と回答したのに対し、そうでない子どもの保護者は12.7%となっていました。
さらに、「子どもの遊ばせ方」について、難関大学合格者などの保護者の28.8%が「自発性を大切にした」と回答したのに対し、そうでない子どもの保護者は16%となっていて、小学校入学前の時期に遊びを通じて自発性や集中力を養うことがその後の学力向上につながる傾向を示す結果となっています。

幼児期によく遊び、好きなことに集中して取り組む経験を持つことは、子どもの好奇心や集中力を育むのによいであろうという考えに私も大いに同意するところだ。しかし一方で、「思いっ切り遊ばせたこと」が本当に難関大学に合格するような学力向上に寄与したのかどうかは、この研究だけでは分からないのが実際のところで、短絡的に結論めいたことを主張するのは学術的には早計である。ツイッター上でも、相関関係と因果関係を取り間違えているといった指摘が複数あった。

つまり、子どもが難関大学に通った親が思いっ切り遊ばせることを意識していた傾向にあることは分かるが、そういった親はもともと教育に関心の高い層で、遊ばせる以外にも、本をたくさん読ませたり、年齢が上がると塾に通わせたり、私立有名校に通わせたりしている可能性もある。これらの様々な要素が子どもの学力に影響するのであり、「思いっ切り遊ばせた」ことが難関大学合格と因果関係を持っているかは分からない。さらに言えば、親が2、30年後に振り返って、自分はそういう育て方をしたと思い込んでいるだけで、実際にそうだったかまでは確認できない。

因果関係を確かめるには、ランダム抽出し同条件で思いっ切り遊ぶグループとそうでないグループに分けて「実験」をする必要があるが、実際にはそれが難しいとしても、少なくとも複数の変数(遊びだけでなく、親の学歴や所得、塾など)を設定し重回帰分析を行う必要がある。私は研究者ではないので、この点については素人だが、この調査はお茶の水女子大学の内田伸子名誉教授によるものであるとのことなので、学術的にもしっかりした研究をしていただきたかったところだ。

そうは言いつつ、私の個人的な経験から言うと、遊びが学びにつながるという考えは間違っていないと思う。私自身は子どもを連れて虫探しに公園に探検に行ったり、レゴなどの知育ブロックで恐竜やロボットやらいろんなものを作ったり、トランプやカルタ、カードゲームで遊んだり、とにかくいろんな遊びをやっている。そして、そのとき集中している子どもの姿にしばしば驚かされる。最近はまっているのは妻が買ってきたアンパンマン図鑑で、2000以上あるキャラクターを熱心に研究して覚えているが、アンパンマンの知識が難関大学の試験に役立たなくても、研究心や探求欲が育つことを信じて見守っているわけだ。

アンパンマン大図鑑―公式キャラクターブック

アンパンマン大図鑑―公式キャラクターブック

遊びは学びにつながる。私はそう信じている。だからこそ、研究ということであれば、学術的にも批判されにくいようにしっかりとやっていただきたかったし、NHKも相関関係と因果関係は区別して、「学校入学前の時期に遊びを通じて自発性や集中力を養うことがその後の学力向上につながる傾向を示す結果となっています。」といった決めつけた報道は避けるべきだ。テーマ自体は面白いのに、研究者やマスコミの科学リテラシーの低さが現れていて、少し残念な報道であった。