本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

児童養護を考えるマンガ5選

ドラマ「明日、ママがいない」で注目をあびている児童養護施設ドラマに対する賛否は様々であるものの、施設で暮らす子どもたちへの偏見がなくなり、共感が強まること、そして虐待や育児放棄がなくなるように望む気持ちは共通しているのだと思う。だからこそ、これを単なる「騒動」で終わらせるのではなく、多くの人々が児童養護施設や社会的養護の問題を改めて考える機会にすべきではないだろうか。そこで、児童養護施設での生活や、児童虐待からの保護、里親などをテーマとするマンガ作品を紹介したい。

まずは、先日も紹介した「いつか見た青い空」。

いつか見た青い空 (ウィングス・コミックス)

いつか見た青い空 (ウィングス・コミックス)

児童養護施設で暮らしたことのあるマンガ家りさりさんが、自身の体験をベースに描いた作品。子どもたちの温かい人間関係や、ちょっとしたところに表現される親と暮らせないことの寂しさ、そして人として大切な普遍的なメッセージが込められており、ぜひ読んでみていただきたい作品だ。先日、こちらで紹介したところ、本ブログ経由だけでも100冊以上が購入されている。改めて本作品に注目があび、多くの方に読まれることを期待している。

次に、同じく施設で暮らしたことのあるマンガ家で、ヒット作「ピンポン」の作者でもある松本大洋氏の自身の施設での体験をベースにした作品「Sunny」。

Sunny 第1集 (IKKI COMIX)

Sunny 第1集 (IKKI COMIX)

松本氏が子どもの頃というと、今から30年以上も前になるので、今の施設とは環境的にはだいぶ異なるだろうが、それぞれ個性をもった子どもたちが独特の世界を創り出しており、思わず引き込まれる。子どもたちへの共感と、なんとなく感じさせられる懐かしさがじわっと染み込んでくる作品だ。現在4巻まで出版されており、こちらもお薦めだ。

上記2作品は施設での生活を実際に経験したマンガ家による作品で、子どもの視点で描かれたものだ。次に、施設に入る理由として特に近年増えている虐待や育児放棄の問題を真正面から取り扱った作品も紹介したい。これらは、社会的養護に関わる病院や保健所、児童相談所児童養護施設などの支援者・専門家側の視点から描かれており、問題の背景や原因、深刻さ、それらに対処する様々な関係者の努力が描かれており、理解を深めるのによい。もちろん、生半可な気持ちでは読めないが、他人事ではない社会の課題として、多くの人にマンガを通してでも知っておいてもらいたい内容だ。

凍りついた瞳 (YOU漫画文庫)

凍りついた瞳 (YOU漫画文庫)

ちいさいひと 青葉児童相談所物語 1 (少年サンデーコミックス)

ちいさいひと 青葉児童相談所物語 1 (少年サンデーコミックス)

もう一つ、里親をテーマにした「ビーマイファミリー」というマンガもある。

不妊治療でも子どもができなかった夫婦が養子縁組で子どもを迎えようとするが、児童相談所のスタッフの勧めで、里親として里子を迎えるストーリー。家に迎えるまでのプロセスが分かりやすく描かれている。養育がうまくいかなかった里親の失敗談にも触れられており、里親入門として読むのによい。

最後にもう一点、児童養護を直接テーマにしたものではないが、養子縁組によって育ったアップルの創始者スティーブ・ジョブズの生涯を知ることも一つの参考になる。製品への完璧さを目指し、しばしば周囲との軋轢を繰り返してきたこと、天才肌で菜食主義やヨガにはまっていたことなどが、産みの親と育ての親が異なる彼の出自と関連づけて捉えられるときがある。いずれにせよ、人類史に残る業績を残したジョブズ特別養子縁組で育ったということは事実である。ジョブズの伝記や映画はそれぞれ話題になったが、伝記をもとにしたマンガも描かれている。

これは、ヒット作「デルマエ・ロマエ」の作者ヤマザキマリ氏が描いたもので秀逸だ。成功した起業家としてのみならず、養子縁組という観点から読んでみると見え方が変わってくるように思う。

児童養護施設や里親、特別養子縁組も、当事者や関係者でない者にとっては実態がなかなか見えにくい。特に日本においてはそうだ。そして、分からないゆえに偏見がうまれ、何か触れてはいけないもののようになってしまう。身近に直接触れる機会がないのであれば、作品を通してでも関心を持ち、理解を深めていきたいものである。児童養護施設を舞台にしたドラマが話題になっているこの機会に、これらの作品を読んでみてはいかがだろう。


こちらもご参考まで。

頭がよくなる! マンガ勉強法 (ソフトバンク文庫)

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