まなブロ by 本山勝寛 教育イノベーター・日本財団子どもの貧困対策チームリーダー

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

タブー化し、ないものにすることが問題の解決につながるのか

日テレドラマ「明日、ママがいない」のスポンサー8社全社がCM出稿を取りやめたそうだ。作品の過剰な演出に批判が出ることは分かるが、それを通して伝えようとしているメッセージや問題提起を深く吟味せずに、世の空気におされ保身のために判断されたものであれば残念だ。日テレ側はそれでも放送を継続すると表明しているが、今後、児童養護施設などをテーマにした番組や作品がタブー視され、取り扱われにくい空気が残ることを危惧する。

これまで私は、このドラマへの評価に関しては、何よりも施設出身者の声に耳を傾けるべきで、なかには作中の子どもたちに共感し評価している声もあること、作品の問題提起を深く考えずに「子どもたちがかわいそう」と軽々しく慈善めいた顔をすることへの懸念を綴ってきた。

さらに、ここでもし日テレ側が折れて放送中止ということになれば、後味の悪さだけが残り、児童養護施設や社会的養子縁組、里親など社会的養護については、関係者以外は触れてはいけない社会のタブーのようなものになってしまはないだろうか。

特別養子縁組で女の子を我が子として迎え育てた方が、ご自身の体験をまとめ、「産めないから、もらっちゃった!」という本を書かれている。

産めないから、もらっちゃった!

産めないから、もらっちゃった!

この方は、特別養子縁組で子どもをもらった(ご本人は「授かった」より「もらった」をあえて使われている)ことを「特別視」せず、「タブー視」せず、近所の方々にもしっかりと伝え、子どもにも早くから丁寧に告知している。そして、「何か疑問に思ったことがあったらいつでも言ってね」と語りかけ、親子でそのことから目を背けずに話し合うことで、親子の信頼関係を築かれている。特別養子縁組(あるいは赤ちゃんポストなど)が、なにか触れてはいけない悪いことのように思うと、本人にもそのことを告げられず、隠してしまう。そして、思春期になり親からではなく外からそのことが漏れ伝わったとき、親子間に深い葛藤が生じる場合がある。

これは、親子の関係が難しくなるのではないかという不安と同時に、社会の偏見をおそれるがためでもある。では、こういった問題はセンシティブだから触れないでおく、専門家である関係者にまかせておいて部外者は立ち入らない、そういった姿勢で果たして世の偏見はなくなるのだろうか。私は仕事の関係で、児童養護施設にも、里親にも、特別養子縁組にも関わりがあるが、社会の関心、理解を高めることの難しさを痛感してきた。そして、関係者だけではなく広く社会がその問題を真剣に考えなければ偏見は決してなくならないと思う。

タブー化し、「一般社会」(と私たちが思い込んでいること)にはまるで存在しないものかのように扱っても、現実の問題はなくならないし、偏見もなくならない。

問題提起を排除するのではなく、間違っていること、過度と思われることは指摘しながらも、真剣に受け止めるべきことは受け止め、社会全体で目を背けずにしっかりと考えることが大切なのではないだろうか。