子どもたちに大人気のアンパンマン
アンパンマンの作者、やなせたかし氏が亡くなられて数週間が過ぎた。「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」。やなせ氏のそんな問いに向き合いながら、子どもたちを横浜のアンパンマンミュージアムに連れていって、その異常な混み合い具合からアンパンマンは永遠に不滅であることを再確認した。
さて、訃報のニュースからしばらくすると、やなせ氏の「遺産の行方」についての報道が話題になっていた。日刊ゲンダイ曰く、「アンパンマンのキャラクターを使ったオモチャや文具などのグッズは軽く1000点を超え、毎年約400億円を売り上げる。キャラクターがオモチャに使われたときは価格の3%が、文具などは2%前後が作者に入る。年に400億円ということは、それだけで毎年10億円くらいの収入があったことになります」 とのこと。さらには、「問題は遺産の行方です。93年に奥さんに先立たれ、子供も親戚もいないそうです。関係者の間では、遺言で誰かを遺産の受取人に指名しているのか、それとも遺言を残さず遺産が国庫に入ることになるのかが話題になっています」というわけだ。
やなせ氏が生前、「お腹が空いた人にパンをあげることが正義」という哲学からアンパンマンを創造したことは有名だが、自治体のゆるキャラも200キャラクターほど無償でつくったということもあかしている。高齢化と経済低迷の厳しい現実にある地方に元気をあげたいという想いからであろう。私も、氏の地元である高知県だけでなく、陸前高田などの被災地で氏の描いた作品を目にした。
そんな氏の生前の生き方を考えると、もし相続先のない遺産やキャラクター版権などがあるとしたら、お腹の空いた人や子どもたちのために活用する基金ができないものかと考えてしまう。「アンパンマン基金」あるいは「やなせたかし基金」として長く社会貢献活動に役立たせることができれば、「お腹が空いた人にパンをあげたい」というやなせ氏の遺志が形になるのではないだろうか。
もちろん、遺産相続人が遺言により指定されていれば、その相続人次第ではあるが、無指定のまま国庫に入って名前の残らないお金になったり、キャラクター使用料も出版社や玩具メーカーが無料で使用して全て企業の利益にしてしまうことは、あまりにもったいない気がする。
私自身はいま日本財団で、「マンガを活用した社会貢献事業ーManga For Good」というプロジェクトを創設すべく、出版社や関係者をあたっている。もしアンパンマン基金ができるのなら、どのような運営母体になるかは分からないが、いずれにせよ「アンパンマンの哲学」が後世に伝わるような基金になればよいなあと妄想する次第である。
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