本山勝寛 4kizフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

ウーマノミクスと北欧の子育て支援

安倍首相の国連総会演説は、スピーチ時間のおよそ半分を使って女性の力の活用について言及するという異例なものだった。(演説文全文)主には、UN Womenなどの国際機関を通じた女性支援やJICAの女性専門家の活躍、紛争下の性的暴力に関する対策など国際的取り組みについてであり、慰安婦問題への批判を念頭に、未来思考な取り組みでそれらの批判を打ち消そうという意図が外務省高官のコメントとして報道されていた。また、国内における女性の社会進出、ウーマノミクスにも言及し、この分野に本腰を入れようとしていることが伺われた。

女性の社会進出や男女平等の実現といえば、真っ先に北欧諸国が思い浮かぶ。世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数でも、北欧諸国は上位常連国で、2012年はアイスランドフィンランドノルウェースウェーデンと続いた。ちなみに、日本は135カ国中101位とかなり低い。北欧は先進国のなかでは経済成長にも成功しており、同じく世界経済フォーラムの国際競争力ランキングで、フィンランド3位、スウェーデン6位、ノルウェー11位と上位国である。

人口規模が異なり、高税率福祉国家の北欧諸国と日本の社会システムはかなり異なるが、安倍首相の昨今のスピーチを真に受けると、どうやら北欧型社会を少なくとも意識し、よい面を取り入れようとしているように見える。北欧は女性の役員比率や政治家の割合なども高く、出生率も1.9前後と高めだ。

北欧諸国では、女性の社会進出を支える子育て支援体制はどうなっているのだろう。米国型と異なり、北欧の場合、女性が出産育児で一定期間休業することは当然で、復職を保障する制度、文化が定着しているのが特徴だ。たとえばフィンランドの場合、育休を263日間取ることができ、その期間は国から収入の約70%が保障される。その後は、低額で保育園に預けることもできるし、保育園を利用せずに家で育児を継続すると、子どもが3歳になるまでは、国から月額約300ユーロ(約4-5万円)の「在宅育児手当」が支給される。同様の制度はノルウェーでも導入されている。

安心・平等・社会の育み フィンランドの子育てと保育

安心・平等・社会の育み フィンランドの子育てと保育

保育園に預けて早く職場に復帰したいという人にも、家庭でじっくり育児に専念したいという人にも、個々人に選択する権利を与え、なるべく税負担を公平にするという考え方からだ。低年齢幼児の保育にコストがかかるのはどこの国も同じで、東京だと0歳児に月4、50万円税負担がかかっているともいう。(参考:育休の価値換算は1200万円以上?)保育園に預けないで家庭で育児をしている場合、税負担を減らし立派な仕事をしているわけだから、手当を出すことはおかしいことではないように思う。3歳までの家庭育児に手当を支給するなどというと、育休3年議論のように、すぐに「3歳児神話」だとかいった批判もでてきそうだが、あくまで個人が選択すればよいだけの話で、国が押し付けるものではない。

重要なのは、子育てを各家庭のペースと考えに基づいて選択できるよう、より公平な制度で保障することだ。たとえば、育休議論でも、非正規雇用者や中小企業には関係ない話という批判が出た。育児休業給付金だけでなく、在宅育児手当制度であれば、育休が取れるかに関わらず等しく受給することができ、不公平感が緩和される。

もちろん、北欧は男性の育休をはじめとした家事育児の共有も進んでおり、社会全体の理解が進むという文化面の進展が最重要であることは言うまでもない。そのうえで、家庭で育児をすることも立派な「仕事」であるという共通認識を持ち、それを報酬(手当)で制度化することも、超少子高齢化の時代にあっては必要なのではと思うのである。