本山勝寛:まなブロ

独学で東大、ハーバード大学院に合格し、国際教育政策修士課程修了。アジア最大級の国際NGOである日本財団で、教育や福祉、NPO支援に携わり世界中を駆け回っています。日本と世界に「学びの革命」を起こすべく、学びのススメを綴ります。 『最強の独学術』https://www.amazon.co.jp/dp/447979610X/

学校図書室に置きたい「戦争」マンガ5選+3

漫画「はだしのゲン」の松江市小中学校における閉架措置が話題になっていた。その是非の議論については他に譲るとして、せっかくなので、学校の図書室というか全ての図書館に置いてほしい、お薦めの「戦争」マンガを紹介したい。「戦争」とカッコ書きしているのは、太平洋戦争・第二次世界大戦を念頭に置きながら、その戦争を理解するには第一次大戦日中戦争、日清、日露とそこにいたる経緯も知らなければならないと考えるので、その全体をさして「戦争」としているつもりである。

1. アドルフに告ぐ

新装版 アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)

マンガの神様、手塚治虫第二次世界大戦前後の日本とドイツを舞台にした作品。アドルフとは、日本に住むユダヤ人青年、その親友で日本人の母を持ちながらドイツでヒトラーの親衛隊に入ったドイツ領事の息子、そしてアドルフ・ヒトラーの三人を指す。ヒトラーにまつわる秘密を軸に三人のアドルフが紡ぎ出す人間ドラマと戦時下の矛盾に生きる人々の営み、歴史的事件が絡み合っておもしろい。手塚自身が「僕にとって歴史じゃなく現実だった。戦争の語り部が年々減っていくので僕なりに、漫画で伝えて、ケリをつけたかったんですよ。」と語っているように、戦争を経験した当事者である手塚治虫が、戦後世代である我々に、正義とは、戦争とはという大きな問いを投げかけている渾身の作品といえよう。


2. 日露戦争物語

日露戦争物語―天気晴朗ナレドモ浪高シ (第1巻) (ビッグコミックス)

日露戦争物語―天気晴朗ナレドモ浪高シ (第1巻) (ビッグコミックス)

「タルるート」や「東京大学物語」で有名な江川達也の作品。登場人物設定が司馬遼太郎の「坂の上の雲」にかなり似ている。秋山真之と兄の好古、同郷の親友である正岡子規の友情を描いた作品序盤は秀逸。日露戦争に入る前に連載中止になってしまっているが、坂の上の雲の入門編として読むとよい。図書館ではぜひ両作品を並べて置いてほしい。


3. 国が燃える

国が燃える 1 (ヤングジャンプコミックス)

国が燃える 1 (ヤングジャンプコミックス)

サラリーマン金太郎」の本宮ひろ志が昭和の満州を舞台に描いた作品で、日露戦争から日中戦争にいたる昭和史が浮かび上がる。石原莞爾の「世界最終戦争論」や石橋湛山小日本主義などが作中で参照されており、植民地争奪戦が繰り広げられる20世紀前半の世界のなかで日本のあり方がどうあるべきであったか考えるきっかけを提供してくれる。


4. 虹色のトロツキー

虹色のトロツキー (1) (中公文庫―コミック版)

虹色のトロツキー (1) (中公文庫―コミック版)

ガンダムの作画ディレクター安彦良和が同じく満州を舞台に描いた作品。安彦は歴史マンガを多数手がけ、どれもお薦めだが、とりわけ面白いイチオシの秀作だ。日本人とモンゴル人のハーフを主人公に、満州国に設立された建国大学や、馬賊の抗日運動、ノモンハン事件などが描き出される。この時代はとかく分かりにくく、学校でもすっとばされてしまうところだが、実は非常に重要であり、かつ興味深い。近現代史にはまるきっかけをつくれる名作といえよう。


5. 水木しげる コミック昭和史

コミック昭和史 (第1巻) 関東大震災~満州事変

コミック昭和史 (第1巻) 関東大震災~満州事変

ゲゲゲの鬼太郎水木しげるによる作品。関東大震災から満州事変、太平洋戦争から戦後の高度経済成長期にいたるまでが描かれている。戦争を経験し片腕を失った著者の証言ともいえる作品で自伝的要素も多く、一庶民からみた昭和史、太平洋戦争を垣間見られる。


以上がお薦めの5選ということになるが、話題の「はだしのゲン」もここに加わってよいと私は思っている。思想的な偏りや、小中学生がみるには表現が過激な部分があるところも否めないが、原爆被害の描写のリアリティはなんといっても圧巻だ。原爆をテーマにした作品では、タッチが全く異なる「夕凪の街 桜の国」もお薦め。戦後の視点から原爆を真摯に見つめる秀作だ。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

それと、思想的バランスという観点でいえば、「はだしのゲン」を置くなら、小林よしのりの「戦争論」を並列すればよい。問題があるから閲覧に制限をかけるのではなく、幅広く様々なものに触れる機会を提供し、判断は読者に委ねるべきだ。小中学生ではまだ判断がつかないのは当然だが、興味を持つきっかけとなる材料を提供し、もっと詳細な本や資料を読みたいと思える動機を引き出すことが重要なのではないだろうか。過激表現や性的描写についても、それがネックになるなら、明確な基準を設定していっそのこと「黒塗り」でもすればよいだけだ。一部に問題があるからといっていい作品を図書館に置かないのはもったいない。

ほかにも図書館においてほしい、勉強になるマンガはたくさんあるが、拙著「マンガ勉強法」でまとめているので、読者の皆さんも「たかがマンガ」とばかにせずに一度読んでみていただきたい。

頭がよくなる! マンガ勉強法 (ソフトバンク文庫)

頭がよくなる! マンガ勉強法 (ソフトバンク文庫)