本山勝寛 SNSフォーキッズ代表 公式ブログ | Katsuhiro Motoyama's Official Blog

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団で教育、国際支援、子ども支援事業に携わり、EdTechスタートアップを起業。 子供向けSNSフォーキッズを立ち上げる。『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』等著書多数。6児父4回育休。

投票では育休3年が最多なのに、支持論者が私一人なので、敢えて再度反論してみる

先日、「育休3年に加え、夫婦育休で給付金10割を提案」という記事を書いたが、その後も各所で育休3年制への強い反対の声ばかりが続くので、批判覚悟で敢えて再度反論したい。

ちなみに代表的反対論は以下。
女子大生でも分かる、3年間の育児休暇が最悪な結果をもたらす理由。

「育児休業3年延長」が政策として全然意味がないワケ

他にも東京新聞社説や日経記事にも育休3年反対論が展開されていた。

そんな四面楚歌の状況なのに、敢えて反論する私の違和感の一つはこれ。
ヤフートピックスの投票では、全投票数47,716人中、最多が3年の31% 【14,969票】、その後に2年(22%)、1年半(20%)、1年未満(20%)、4年以上(7%)と続く。現行の1年半よりも多い年数を選んだのは合計60%になる。

ヤフーのネット投票が必ずしも民意をそのまま反映しているとは限らないし、男女や年齢によって結果は変わってくるとは思うが、無視はできないデータではないだろうか。にもかかわらず、声が強く発信される論評は、私を除いて全て反対論だ。私なんかはバカだとか頭がおかしいとか罵倒されている。

まず城繁幸氏のこの論。

そもそも多くの家庭では専業主婦をやる余裕がないから働きたいというニーズがあるのであって、「無給で2年間家にいてもいいですよ」と言われたからといって「はいそうですか」と家にいる人は多くはないだろう。

多くないから無視してもいいんでしょうか?
公務員は既に3年育休が認められているが、国家公務員の実態調査によると、24ヶ月超の期間取得(つまり3年制を利用)している方が12.1%いる。さらに12月超24月以下は33.7%で最多だ。つまり、45.8%が民間企業の通常の1年の枠を超える期間の育休を利用しているということになる。(民間も特別な理由があれば1年半の取得が可能だかここでは細かい点は省きたい)
さて、45.8%という数字は少ないのでしょうか?あるいは12.1%という数字も無視していいくらいの数でしょうか?
さらに、この数字は激務である国家公務員の統計なので、地方公務員や教職などではもっと高い数値になるのではと推測される。

確かに、雇用が守られている公務員だからこうなるのであって、民間企業ではたとえ制度があっても実際にはこうはいかないだろう。しかし、できることならそうしたいというニーズがこれだけあることは知っておくべきだ。

さらに言えば、公務員と民間で公平ではない現状があることも無視すべきではない。橋下市長はこれを問題視して、公務員は民間に合わせるべきとの論を展開していたが、私はこの問題については民間にも公務員レベルの制度を保障すべきだと思う。


もう一つ、中嶋よしふみ氏の論。

その学生に育児休暇延長についてどう思うか聞いてみた所、悪い方針ではないと考えているようだった。そこで「自分が経営者だったとして、これを法律で強制されたら女性を雇いたいと思う?」とさらに聞いてみた所、少し考えてから「すごい雇いにくくなりますよね……」という答えが出てきた。女性としては納得行かないが、経営者の立場から合理的に考えればそう結論を出さざるを得ない、という表情だった。

たとえそういう「合理的な」経営者が日本には残念ながら多かったとしても、そういう現状を肯定するかたちで妥協してもいいのでしょうか?
そもそも、せっかく人材育成をしても出産を機に退職せざるを得ない女性がまだまだ多い現状で、そういった合理的な経営者は今でも女性を雇いたいと思っていないだろう。私なら、この女子大生に、「納得いかない結論」を出させるのではなく、そんな経営者のいる企業には初めから就職しないほうがいいとアドバイスするだろう。それよりも女性や多様な人材の活用に積極的な企業をお勧めする。大手金融機関やローソンなど既に3年育休制を打ち出している。実際にどのくらい使うかは、そのときの状況や考え方で選べばよい。

何度も書くが、育休3年制は義務ではなく、選択の幅を拡げる制度だ。実際にどのくらい取得するかは個人が決めればよい話だ。最長3年であっても、3ヶ月で切り上げることもできる。

また、保育園の拡充や時短勤務が無視されて育休3年だけが推し進められるなら問題だか、今回の政府発表はそうではない。むしろ、歴代政権の中で一番踏み込んだ発言をした。育休3年が第一優先とは言えないだろうが、最悪とか全く無意味とかそれだけが目の敵にされることが本当に正しいのだろうか。

これも再度書くが、妻が0〜1.5歳、夫が1.5歳〜3歳を取得した場合、給付金を3年間支給する制度も検討いただきたい。夫の育休給付金は給与の5割と言わず上乗せすれば、男の取得者も幾分増えるのではないだろうか。

いずれにせよ、議論が一方向だけに傾くのをよしとするのではなく、より深まるよう期待したい。反論は大歓迎です。