まなブロ by 教育イノベーター本山勝寛

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

星の王子様の哲学「一番大切なものは目に見えない」

大学受験や就職活動。人生の一大転機である進路を真剣に考える季節だ。
受験や就活の際、人はどうしても目に見えるもの、たとえば具体的に数字に表れるものや、何か特定の決まったものを求めたがる。給料の高さであるとか、その企業の売上実績であるとか、それを保証するための大学の就職率だとか、偏差値だとか。もちろん、勉強や就職活動の動機をそういった具体的な目標に落とし込み、対象を客観的に分析することの重要性と効用について否定するつもりはない。しかし同時に、そこには限界もまたあることをしっかりと認識しなければならない。
ここで、世界で8千万部売れたとされる、聖書に次ぐ世界的ベストセラー『星の王子様』にこめられたメッセージについて考えてみたい。この本は子供向けの児童書というイメージが強いが、実は大人こそ真剣に考えるべき強いメッセージがこめられている。

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)

主人公の「僕」が砂漠で出会った、ある星から来たという「王子様」のお話には、王子様が行った星々に、それぞれ大人の姿を象徴するかのような人たちが登場する。他人に称賛されるためだけに一人で生きている「大物気取り」や、星の数を数えて自分のものだといって忙しく管理する「実業家」、探検家の話を書き留めるだけで自分ではどこにも行かない「地理学者」といったように。まさに見栄や体面ばかりを気にして、本当に大切なものを見失っている大人の姿を風刺しているわけだが、私たちはこの話が決して他人事ではないことを認識すべきだろう。
私には、この「大物気取り」がどこかの大企業の会長さんや政治家のようにも見えるし、星の数を忙しく数える「実業家」は複雑な数字の魔術でサブプライムローンを発明しリーマンショックをもたらした一部の金融屋に、「地理学者」は大学でたくさん見てきたお偉い先生方のようにみえてくる。そして実は、それらは私自身にも潜んでいる姿でもあることに気づかされ、はっとさせられる。
一方で、王子様が友情を交わし合ったキツネは別れ際にこう言い残す。
「じゃあ秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。」
大切なものは目に見えない。おそらく、子どもの頃よく言われてきたことだろう。しかし、他人からは目に見える実績と数字を求められ、自らも目に見える評価を求めてきた私たちにとって、いつしかそういった価値観は部屋の隅っこに追いやられてきたものかもしれない。大人だけでなく、子どもですらそうだ。
王子様は最後、こう言って主人公の前から姿を消す。
「きみが星空をみあげると、そのどれかひとつにぼくが住んでるから、そのどれかひとつでぼくが笑ってるから、きみには星という星が、ぜんぶ笑ってるみたいになるっていうこと。きみには、笑う星々をあげるんだ!」王子様と別れた主人公は、悲しみを抱えながらも、夜空を見上げて星々の笑い声に耳を澄ますのが好きになる。そして王子様と交わし合った、たった数日間のその思い出によって、空の見え方が変わり、世界のなにもかもがまったく変わってしまう。
本当に大切なものと出会い、絆を結ぶことで、世界の見え方がまったく変わってしまう。
その出会いを大切にする力こそが、学びの哲学だ。

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