まなブロ by 教育イノベーター本山勝寛

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

エチオピアに持っていった本〜シュバイツアーの学びの哲学(1)

エチオピアへの旅の機内でこの手記を記している。私は月に1,2回ほどのペースで海外へ出張している。海外出張に長時間のフライトはつきものだ。狭い空間に10時間以上座り続けこることは肉体的には苦痛だが、それだけ1人の時間が与えられる機会はめったにない。ここぞとばかりに、読書と執筆のための貴重な時間として活用している。

旅というものは人間にインスピレーションを与える。その土地の空気、文化、人、建物、歴史などが新しい観点や発想をもたらしてくれる。それだけではない。日常と労働から解き放たれる機会を提供する移動時間そのものが、より深部への思考を可能にしてくれる。中国の古典でひらめきを得やすいとされる「三上」という3つの時がある。枕上、厠上、馬上だ。馬の上とは、まさに旅の移動時間のことだ。

私にとっても、移動時間は静かに読書し、深く思索する絶好の時間だ。そのため、出張時に持っていく本を選ぶことは、最も重要な準備の一つだ。出張先の国は様々なので、できるだけ訪問先やそのときの目的、あるいは会う予定の人物などと何らかのかたちで関連する本を持っていくようにしている。

シュバイツァー (センチュリーブックス 人と思想 31)

シュバイツァー (センチュリーブックス 人と思想 31)

今回は、シュバイツアーの伝記(人と思想シリーズ)を持っていくことにした。2年ほど前に読んだ本だが、アフリカ大陸でハンセン病と人間の尊厳の問題を考える今回の仕事の前に、アフリカの医療に従事し、「密林の聖者」と称されたシュバイツアーの生涯を再度振り返っておきたかったからだ。2年前の読書で知ったことだが、彼の病院にはハンセン病患者も多く、ノーベル平和賞の賞金はハンセン病患者の病棟のために使われてもいる。

アルベルト・シュバイツアーは子どもの伝記シリーズでも定番の、いわゆる偉人の一人だ。先述のキング牧師マザーテレサなどと並び称される。私も少年時代、彼のマンガ伝記を読んだ記憶がある。その頃の印象は「アフリカの人のためにがんばった偉いお医者さん」というもの。大方の日本人も同じようなイメージかもしれない。

シュバイツァー―医療と伝道に一生をささげた聖者 (学習漫画 世界の伝記)

シュバイツァー―医療と伝道に一生をささげた聖者 (学習漫画 世界の伝記)

そのイメージが変化したのは大学時代、内村鑑三の本を耽読していた頃だ。内村は日本で最初にシュバイツアーを紹介している。そして、アフリカでの献身的な医療活動のみならず、むしろ神学者としてのシュバイツアーを紹介した。シュバイツアーは、有名なアフリカの回想記『水と原生林のあいだに』のほかにも、「イエス伝研究史」など神学、宗教哲学に関する著作を多数著している。医師であると同時に神学者、牧師でもあり、それも遠い日本の内村鑑三をうならせるほどの一級の神学者だった。

彼がアフリカの原生林のなかで医療に従事する決意をしたこと、そして結果的に世界中の人々の心を震わせ、ノーベル平和賞をもたらすことになった「生命への畏敬」という彼の哲学もこのことと無関係ではない。そこで、シュバイツアーの「学びの哲学」を考えてみたい。

キーワードは「カバ」である。

(続きは次回)

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