まなブロ by 本山勝寛 教育イノベーター・日本財団子どもの貧困対策チームリーダー

教育イノベーター本山勝寛の学びのススメ日誌。極貧家庭から独学・奨学金で東大、ハーバード大学院に通い、国際教育政策修士課程修了。日本財団子どもの貧困対策チームリーダー。『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』 『最強の独学術』等著書多数。

北条民雄と川端康成とヨブ記

高山文彦氏著『火花―北条民雄の生涯』を読み終えた。

火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)

火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)

アフリカのハンセン病出張へ旅立つ機上で。しかも、著者である高山氏とともに行く旅である。
ここ数年で読んだ本で最も印象に残った本であると思う。
ハンセン病北条民雄。北条と川端康成。北条と高山氏。生きるということを突きつけられるような出会いの群に、私自身が列席させられたおもいである。
23歳で夭折し、壮絶な文学をのこした北条民雄
そんな北条のいのちの煌きを、温かくも冷静に育てみつめた川端康成

私は最も好きな作家が川端康成であった。その川端が北条民雄というハンセン病作家と交流があったことは、勤め先である日本財団笹川陽平会長を通して知っていた。というのも、現会長の亡父である笹川良一氏と川端は同級生であったというのだ。
そんなところにまで不思議な縁の糸を感じていたわけだが、その糸が今、高山氏の『火花』を通してさらにつながったような気がする。高山氏は学生時代、北条の代表作「いのちの初夜」と出会い、その衝撃から長年、北条民雄を書きたいと願い続けてきたのだという。

奇しくも、今年3月11日、東日本大震災が襲った後、私があらためて読んだのが聖書の「ヨブ記」だった。
私は「日本」という国が何故にこのような大惨事に遭うことになったのか。一日本国民として、どうような心情をもってこの悪夢のような避けがたい現実を消化すればよいのか悩み、ヨブ記にいたった。
そのヨブ記が、今度はまったく文脈を変えて、ハンセン病という悪夢のような現実を前にした人間の苦悩記として触れられていたのだ。

どうか、わたしの言葉が、書きとめられるように。
どうか、わたしの言葉が、書物にしるされるように。
鉄の筆と鉛をもって、
ながく岩に刻みつけられるように。

高山氏はヨブ記のこの一節を『火花』の冒頭にもってきている。そして、北条が病を発症し、同書のなかでハンセン病について触れるにあたって、ヨブの苦悩によってその病について語らせている。北条もまた、川端から与えられた聖書のなかでもっぱら読んだのがヨブ記だったという。

私自身、1ヶ月前にハンセン病担当という職務を与えられた。これまで考えてもいなかった仕事である。それから、なかば職務上の義務感から『火花』を手に取ったわけだが、この一連の出来事が、自分にとって何かを意味しているように思えてならない。まるで私の岩に何かが刻みつけられたような。
その何かが何であるのか、今はよく分からないのだが、少なくともこの感情を大事にして生きてみたい。

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