ハーバードには、最近まで国家元首級を務めていた現役学生もいる。
ケネディスクール(行政大学院)の修士課程で学ぶ、タンザニアの前首相フレデリック・スマエ氏(FREDERICK SUMAYE)もその一人。(タンザニアは大統領制で、選挙で選出された大統領が首相を任命する。)
彼は1995年から2005年までの10年間、タンザニアで首相を務め、昨年から1年間、ハーバードで学んだ。
今日は、近くのホテルで開かれた宗教リーダーたちが集まる平和イニシアティブのイベントで、彼のスピーチを聞くことができた。
印象に残っているのは、アメリカの使命、天命についてのくだり。
アメリカは世界で最も豊かで強い国だが、それはアメリカの為にあるものではなく、世界の為のものである。
イラク、スーダン、パレスティナ、パキスタン・・・世界中で起こっている紛争という難題に取り組む使命を、アメリカは持っている。
その紛争の多くは、宗教的な葛藤を背景に抱えている。
だからそれらの解決の道は、軍事、経済によるものではなく、宗教間の和合、特にキリスト教、イスラム教、ユダヤ教が一つとなることによってのみ可能であり、神の理想のもと建国され、多様な背景を持つ移民が集まるアメリカは、その使命を帯びている。
また、ハーバード・ビジネススクールを卒業し、世界的にサービス・教育プログラムを指導・展開しているもう一人の方(僕が卒業した神学校のOBでもある)のスピーチで印象に残った点。
ハーバードを始め、アメリカで教育を受けることができて最もよかった点は、アメリカが夢によって始まった国であり、それを感じ取ることができたこと。
そしてその夢は、政治的な夢でも、経済的な夢でも、軍事的な夢でもなく、神の理想を実現するという夢から始まった。
神の理想、夢とは人類が一つの家族となること。
信仰の自由、そしてその神の夢を実現するために、この国の歴史は始まったはずだ。しかし、今のアメリカはその理想を失いかけている。この国はもう一度、その夢に立ち返らなければならない。
(日本人はほとんど触れたことがない観点かもしれないが、)
僕が神学校で探求生活を行っているとき、アメリカに行くことを決心した動機、ハーバードに挑戦することを決意した動機も、まさにこの点にあったということを思い出した。
大量の課題と慣れない英語に苦しむ中で、あるいは、目に見える格差問題やサービスの質の低さ、まずい飯、イラク戦争に対する国の表面的分裂などに失望するなかで、すっかり意識の片隅に追いやられていたのかもしれない。
既に卒業を間近に控えてしまっている立場だが、自分に与えられた一年間が、一体どういう意味を持っていたのか、アメリカが僕にくれたメッセージとは何だったのか、反芻に反芻を重ね、明日を照らすビジョンへと転換していきたい。